みみ【耳】 を 洗(あら)う
世俗の汚れたことを聞いた耳を、洗いきよめるの意。世俗の
栄達をきびしく避けることのたとえにいう。堯帝から
天下を譲ろうといわれた
許由(きょゆう)は、辞して
箕山に隠れた。再び堯帝は召そうとしたが、許由は断わり、汚れたことを聞いたと
潁水(えいすい)で耳を洗った。
巣父(そうほ)も堯帝から同じことをいわれたが、許由が耳を洗っている所を牛を引いて通りかかり、そのような汚れた水を牛に飲ませるわけにいかないと、
上流に牛を引いていったという「
史記‐伯夷伝・史記正義」中の「皇甫謐高士伝」の
故事による語。耳をすすぐ。耳を洗えば牛を引いて帰る。
※
平治(1220頃か)上「誠に
漢朝の許由は、
富貴の事をききてだに、心にいとひ思ふが故に、あしき事をききたりとて耳をあらひき」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「耳を洗う」の意味・読み・例文・類語
耳を洗・う
《「史記正義」伯夷伝の故事から》世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。世俗の栄達をきびしく拒否するたとえ。耳をすすぐ。
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耳を洗う
高い地位や高い評判を得ることを嫌い、俗世間から離れて清らかに暮らすことのたとえ。
[使用例] 玉ちる早瀬浪の音 都の塵に遠ければ 耳を洗わん人も無く[土井晩翠*天地有情|1899]
[由来] 「高士伝―上」に出て来る逸話から。紀元前十数世紀、伝説時代の中国でのこと。聖王の堯が、賢者として名高い許由に天下を譲ろうと考えました。ところが、許由はその話を断り、けがらわしいことを聞いたと思い、近くの川のほとりで耳を洗ったということです。ちなみに、この話には、その川の少し下流で子牛に水を飲ませていた巣父という人物が、そのことを知って、上流に移動してから子牛に水を飲ませた、というおまけまで付いています。
出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報