聖覚(読み)せいかく

精選版 日本国語大辞典 「聖覚」の意味・読み・例文・類語

せいかく【聖覚】

  1. 平安末・鎌倉初期の浄土宗の僧。通称安居院(あぐい)法印藤原通憲の孫にあたり、比叡山静厳に学んで説法にすぐれていたが、のち法然の門にはいり、浄土教を広めた。主著「唯信鈔」「黒谷源空上人伝」など。仁安二~嘉禎元年(一一六七‐一二三五

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朝日日本歴史人物事典 「聖覚」の解説

聖覚

没年:嘉禎1.3.5(1235.3.25)
生年:仁安2(1167)
平安・鎌倉時代の天台宗の僧。藤原通憲の孫。父は澄憲法印。父と共に唱導の安居院流を開く。安居院の法印とも呼ばれる。比叡山で出家し,比叡山東塔北谷竹林房の静厳について学び,恵心・檀那の両流を相伝した。のちに竹林院の里坊である安居院に住み,唱導法談をもって一世を風靡した。法然に師事して浄土教に帰依して,他力念仏を勧めた『唯信抄』を書く。『一期物語』によれば,法然が瘧の病のときに,九条兼実が聖覚に命じて善導の影前において唱導を行わせたところ,病が治ったという。嘉禄の法難(1227年,法然門下の専修念仏者に加えられた迫害)では念仏停止を進言した。雅成親王からの下問に対して答申したり,後鳥羽上皇からの宗義勅問を受けて答申し,大いに活動した。

(林淳)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「聖覚」の意味・わかりやすい解説

聖覚
しょうかく

[生]仁安2(1167)
[没]文暦2(1235).3.5. 京都
鎌倉時代初期の僧,歌人。「せいかく」ともいう。澄憲の子。信西 (藤原通憲) の孫。安居院 (あぐい) 法印。父の業を継ぎ説経,唱導の名人で後鳥羽院の信任を得,安居院一流の基礎を築いた。天台宗の僧であるが,のち法然の門に入り『唯信抄』 (1221) を著わす。法然の弟子のうちで,親鸞が尊敬した1人。親鸞は『唯信抄』を人々にすすめ,それをもとに,『唯信抄文意』 (1巻) をつくった。歌は『新勅撰集』『続千載集』に入集。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「聖覚」の解説

聖覚 せいかく

1167-1235 鎌倉時代の僧。
仁安(にんあん)2年生まれ。澄憲(ちょうけん)の子。藤原通憲(みちのり)の孫。比叡(ひえい)山の静厳(じょうごん)に天台をまなぶ。京都の安居院(あぐい)にすみ,安居院法印とよばれた。説法唱導にすぐれた。のち法然(ほうねん)の浄土教の教えに服し,その弟子となった。文暦(ぶんりゃく)2年3月5日死去。69歳。法名は「しょうかく」ともよむ。著作に「唯信鈔」「四十八願釈」など。

聖覚 しょうかく

せいかく

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世界大百科事典(旧版)内の聖覚の言及

【安居院】より

…澄憲は比叡山で檀那流の天台教学を修め,学識と弁舌の才で知られ,大僧都,法印に叙せられたが安居院に退去し,華麗な表現の表白諷誦文(ひようびやくふじゆもん)と機知に富んだ譬喩因縁譚(ひゆいんねんたん)を中心とした説経で人々の教化にあたり名声を博した。澄憲の第3子聖覚(1167‐1235)がその風をつぎ,澄憲に劣らぬ学識と説経の巧みさをもって〈安居院の法印〉として同流の基礎を築いた。以後,隆承,憲実,憲基とその子孫が伝統をうけつぎ延暦寺門跡の院家となり,13世紀半ば(寛元年間)に興った三井寺派の定円の流の説経とならんで皇族貴庶の信仰をあつめた。…

【節談説教】より

…ことばに(ふし)(抑揚)をつけ,洗練された美声とジェスチャー(身ぶり)をもって演技的表出をとりながら聴衆の感覚に訴える詩的・劇的な情念の説教である。仏教伝来のときから行われたと推定されるが,天台宗の澄憲(ちようけん)(?‐1203)・聖覚(しようがく)(1167‐1235)父子が樹立した安居院(あぐい)流(安居院)と寛元(1243‐47)のころ定円が創始した三井寺(みいでら)派のことが《元亨(げんこう)釈書》に見える。安居院流は浄土宗と真宗に入り,とくに真宗で節談説教が興隆した。…

【一念義・多念義】より

…〈信を一念にむ(う)まるととりて,行をば一形にはげむべし〉というのが法然の基本思想であった。この一念・多念の争いを止め,排他的見解を融和させようとしたのが聖覚の《唯信抄》である。隆寛の《一念多念分別事》にもこの姿勢がみられる。…

※「聖覚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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