日本大百科全書(ニッポニカ) 「職能国家」の意味・わかりやすい解説
職能国家
しょくのうこっか
一般的に積極的な機能を遂行する国家の概念であるが、その意味で奉仕国家、積極国家、行政国家、福祉国家などと重なっている面がある。20世紀に入り、資本主義の高度な発達、機械技術の異常な進歩、大衆民主主義の成立、社会生活の複雑化などに伴って、国家とくに行政府は積極的に国民にサービスするよう要求されたが、この要請を端的に示すのがこの職能国家の概念である。近代には、個人の生活にできるだけ干渉しないほうがよい、という自由国家や夜警国家の概念が支配的であったが、現代では、資本主義の矛盾から生ずる倒産、失業、貧困などの救済のために、国家は積極的な意義を担うようになってきた。それゆえ、この国家概念の転換は、まとめていえば、消極政治から積極政治へ、または放任主義から干渉主義への転換、さらには、政治からの経済の独立ではなく、経済への政治の奉仕を意味するものである。
[日下喜一]