中国、後秦(こうしん)代の仏教書。著者は僧肇(そうじょう)。1巻。『物不遷論(もつふせんろん)』『不真空論』『般若無知(はんにゃむち)論』『涅槃(ねはん)無名論』という4編の論文に、『宗本義(しゅうほんぎ)』の一編を冠して編されたものだが、『宗本義』の真撰(しんせん)については疑問がもたれ、編纂(へんさん)は梁(りょう)代から隋(ずい)代のころと推定される。著者は、鳩摩羅什(くまらじゅう)に師事して大乗仏教、とくに般若空観(くうがん)の理解に優れた。本書は、その基本的命題である諸法の実相・空・般若・涅槃についての見解を、当時の一般的理解や老子・荘子などの思想と比較しつつ明らかにしたもので、以後の中国仏教や思想界に多大の影響を及ぼし、多くの注釈書も書かれた。
[伊藤隆寿]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…のちクマーラジーバ(鳩摩羅什)に師事して彼の伝えた竜樹の大乗教学を学び,師の訳経事業を助けた。《肇論》および《注維摩》は,老荘思想の深い理解のうえに大乗教学を述べた代表的著作であり,中国仏教史のみならず中国思想史にも多大な影響を与えた。【麦谷 邦夫】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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