中国、後秦(こうしん)代の僧。京兆(けいちょう)(西安)の人。訳経僧鳩摩羅什(くまらじゅう)門下の四哲の一人。幼少のころから経史など古典に通じ、老・荘を愛好したが、『維摩経(ゆいまぎょう)』をみて歓喜し、ついに出家した。のち姑臧(こぞう)(甘粛省)にあった羅什に師事し、401年(弘始3)師とともに長安に帰り、後秦第2代の皇帝姚興(ようこう)(在位393~416)の命により逍遙(しょうよう)園における羅什の訳業を助けた。404年『大品般若経(だいぼんはんにゃきょう)』が訳出されると、僧肇は『般若無知論』を著し、羅什に呈して賞賛された。廬山(ろざん)の隠士劉遺民(りゅういみん)もそれを読んで感嘆し、質疑書を送り、書簡を交わした。さらに『維摩経注』や『物不遷(もつふせん)論』『不真空論』を著し、羅什訳の諸経論の序文を製するなどし、羅什の多くの弟子のなかでも第一人者として活躍した。師の没後に『涅槃(ねはん)無名論』を撰(せん)して姚興に献じた。後世、上記4種の論文は一括されて『肇論(じょうろん)』と題して流布された。
[伊藤隆寿 2017年2月16日]
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