肉蒲団(読み)にくぶとん

精選版 日本国語大辞典 「肉蒲団」の意味・読み・例文・類語

にく‐ぶとん【肉蒲団】

[1] 〘名〙 同衾(どうきん)する女性を蒲団に見なしていう語。転じて、女性の肉体
※雑俳・柳多留‐一五〇(1838‐40)「国政の綻となる肉布団
[2] 中国、清代の艷笑小説。一名「覚後禅」。六巻二〇回。李漁作ともいうが不詳。未央生(みおうせい)が色道遍歴ののち、悟りを開き参禅するという筋で、仏教因果応報基調となっている。性的技巧描写と、趙子昂画といわれる三六編の春画がすぐれている。宝永二年(一七〇五)刊の和刻附訓本がある。

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デジタル大辞泉 「肉蒲団」の意味・読み・例文・類語

にくぶとん【肉蒲団】[書名]

中国の好色小説。6巻20回。明末・清初の作家李漁の作といわれ、主人公の未央生が漁色の末に出家する物語。一名、覚後禅。日本でも18世紀初めに出版された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肉蒲団」の意味・わかりやすい解説

肉蒲団
にくぶとん

中国の小説。一名『覚後禅』、また『耶蒲縁(やほえん)』『野叟奇語鍾情録(やそうきごしょうじょうろく)』『循環報』『巧姻縁』などともいう。六巻20回。中国春本の出色。もちろん禁書の厄にあっている。作者についてはかならずしも明らかではないが、明(みん)末清初の文人李漁(りぎょ)(字(あざな)は笠翁(りゅうおう))の作とおぼしい。物語は、主人公未央生の漁色を中心に展開するが、結局その非を悟った未央生が出家して終わる。淫書(いんしょ)でありながら、作者は本書を経書として読めといって、因果応報の理を説き、勧善懲悪のポーズすら装う。まことに人をくったやり方ではあるが、もし本書を風流放誕の才子李漁の作とみるならば、彼の真骨頂を発揮した小説といえる。なお本書は日本にも早く伝わり、江戸時代に宝永(ほうえい)(1704~11)の刊本がある。

村松 暎]

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