出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報
善事,善行を勧め,悪事,悪行をうちこらすこと。儒教および仏教の思想にもとづく通俗的な道徳思想。何が〈善〉であり,〈悪〉であるかについての根元的な考察を欠くが,《湖月抄》(北村季吟著)のような注釈書までが,《源氏物語》の意義を〈勧善懲悪〉に求めたことにも知れるように,江戸時代にあっては,ひろく大衆を思想的に啓発し,嚮導(きようどう)する文学・演劇が,基本的に持つべきとされる,文学的原理であった。曲亭馬琴にいたり,この勧懲原理は,〈弱きを助け,強きをくじく〉義俠の思想と結びつき,善悪邪正が葛藤し角逐しあう伝奇的長編小説のなかに,民衆が待望する理想的英雄像をつくる,有効な小説原理となった。このような馬琴の小説を代表として,江戸期より近代にいたる,講談,歌舞伎,浄瑠璃,大衆小説,浪花節なども,その反権力的発想のよりどころとして〈勧善懲悪〉を標榜し,民衆のなかの根づよい世俗的な道徳として定着させていった。
執筆者:高田 衛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
善を勧め悪を懲らすの意。物語などでは「善人栄え、悪人滅ぶ」式の結末をもつ筋立てとなる。出典は中国の『左伝』の「懲悪而勧善」などに求められる。日本では、儒教思想、とくに朱子学の流れをくむ文学観に、仏教の因果応報思想が結び付き、江戸時代後半の小説や演劇などの創作態度や道徳観として現れた。明治になり、曲亭馬琴の勧懲主義を批判して、坪内逍遙(しょうよう)は人情の模写を小説の第一義の目的とした。
[浅井 清]
『中村幸彦著『戯作論』(1966・角川書店)』▽『中村幸彦著『近世文芸思潮攷』(1975・岩波書店)』
…ことばとしては《大唐慈恩寺三蔵法師伝》に見える。仏教の基本的考えである因・縁・果・報の認識をもとに,宗教的達成をめざすための教えであるが,結果的には勧善懲悪的な役割を果たした。早くから,仏教が日本人に教えたことであったが,平安時代初頭の《日本国現報善悪霊異記(日本霊異記)》にはこれが横溢している。…
※「勧善懲悪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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