デジタル大辞泉
「勧善懲悪」の意味・読み・例文・類語
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かんぜん‐ちょうあくクヮンゼン‥【勧善懲悪】
- 〘 名詞 〙 善行を賞し勧め、悪行を戒め懲らすこと。勧懲。
- [初出の実例]「左伝は勧善懲悪(テウあく)を以て、本とす」(出典:応永本論語抄(1420)為政第二)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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勧善懲悪
善行を勧め励まし、悪行を戒め懲らすこと。勧懲。
[使用例] ひたすら勧善懲悪をば小説稗史の主眼とこころえ、彼の本尊たる人情をば疎漏に写すはをかしからずや[坪内逍遙*小説神髄|1885~86]
[使用例] しょせん、戯作は慰みものではないかね。命を張るだけの値打があるかい? 読者はみんな寝っころがって暇つぶしに読んでいるだけだぜ。勧善懲悪、波瀾万丈、善玉悪玉、豪傑英雄……それで充分だ[井上ひさし*手鎖心中|1972]
[使用例] 現実の公文は、この世に「勧善懲悪」が行われているわけでもなく、正義が日常生活の中にころがっているのでもないことをよくよく知っているのである[曾野綾子*木枯しの庭|1976]
[解説] 昔の読みものや映画、ドラマによく見られたテーマです。文字どおり、善を勧め、悪を懲らしめることです。
典型的なのは一昔前の時代劇です。誰が見ても悪い人物が、最後には主人公によって痛い目にあいます。
江戸時代の文学では、曲亭馬琴の作品が有名です。代表作「椿説弓張月」「南総里見八犬伝」は、どちらも正義が勝つ話です。例文の[手鎖心中]では、小説に描かれた馬琴が、「物語というのは勧善懲悪でいいのだ」と語っています。
明治時代になると、坪内逍遙がそれまでの勧善懲悪を否定し、馬琴を強く批判しました。それ以来、ものごとを善か悪かで分ける単純な作品は、二流の芸術とされることが多くなりました。
現代の作品では、善とも悪とも言えない複雑な人物が多く登場します。でも、一方では、悪を懲らしめる単純なヒーローも人気です。私たちは心のどこかで、「だめなものはだめ」とはっきり言ってくれる存在を求めているのでしょう。
出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報
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勧善懲悪 (かんぜんちょうあく)
善事,善行を勧め,悪事,悪行をうちこらすこと。儒教および仏教の思想にもとづく通俗的な道徳思想。何が〈善〉であり,〈悪〉であるかについての根元的な考察を欠くが,《湖月抄》(北村季吟著)のような注釈書までが,《源氏物語》の意義を〈勧善懲悪〉に求めたことにも知れるように,江戸時代にあっては,ひろく大衆を思想的に啓発し,嚮導(きようどう)する文学・演劇が,基本的に持つべきとされる,文学的原理であった。曲亭馬琴にいたり,この勧懲原理は,〈弱きを助け,強きをくじく〉義俠の思想と結びつき,善悪邪正が葛藤し角逐しあう伝奇的長編小説のなかに,民衆が待望する理想的英雄像をつくる,有効な小説原理となった。このような馬琴の小説を代表として,江戸期より近代にいたる,講談,歌舞伎,浄瑠璃,大衆小説,浪花節なども,その反権力的発想のよりどころとして〈勧善懲悪〉を標榜し,民衆のなかの根づよい世俗的な道徳として定着させていった。
執筆者:高田 衛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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勧善懲悪
かんぜんちょうあく
善を勧め悪を懲らすの意。物語などでは「善人栄え、悪人滅ぶ」式の結末をもつ筋立てとなる。出典は中国の『左伝』の「懲悪而勧善」などに求められる。日本では、儒教思想、とくに朱子学の流れをくむ文学観に、仏教の因果応報思想が結び付き、江戸時代後半の小説や演劇などの創作態度や道徳観として現れた。明治になり、曲亭馬琴の勧懲主義を批判して、坪内逍遙(しょうよう)は人情の模写を小説の第一義の目的とした。
[浅井 清]
『中村幸彦著『戯作論』(1966・角川書店)』▽『中村幸彦著『近世文芸思潮攷』(1975・岩波書店)』
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勧善懲悪
《The Promotion of Virtue and Prevention of Vice》パキスタン(連邦直轄部族地域カイバル地区)で活動するスンニ派イスラム過激組織。2003年結成。タリバン支持勢力のひとつとされる。2008年、政府により非合法化。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
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世界大百科事典(旧版)内の勧善懲悪の言及
【因果応報】より
…ことばとしては《大唐慈恩寺三蔵法師伝》に見える。仏教の基本的考えである因・縁・果・報の認識をもとに,宗教的達成をめざすための教えであるが,結果的には勧善懲悪的な役割を果たした。早くから,仏教が日本人に教えたことであったが,平安時代初頭の《日本国現報善悪霊異記([日本霊異記])》にはこれが横溢している。…
※「勧善懲悪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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