内科学 第10版 「肺動脈狭窄症」の解説
肺動脈狭窄症(先天性心疾患)
心肺血流供給の①基部である弁下,弁,弁上部の狭窄性病変および②分岐部以遠の末梢性狭窄を指すが,それぞれ単独病変である場合とほかの先天性心疾患(CHD)との合併病変がある.次項に述べるFallot四徴症はこれらのいずれの病変とも合併する.本項では単独弁性病変について述べる.Hoffmanらによれば0.73/1000出生であり全CHDの約8%を占める.
発生機序
肺動脈弁尖の肥厚,癒合あるいは異形成によって生じる.Noonan症候群における異形成にはPTPN11遺伝子の関与が示唆されている.
重症度
最重症の場合には生直後から卵円孔を介する右左短絡によってチアノーゼが明らかとなる.これは収縮期圧上昇を維持するための右室拡張期圧上昇によって起こる.肺血流は大部分が動脈管を通じて供給され,右室圧は左室圧を凌駕する(重症PS).バルーン肺動脈弁裂開術,外科的狭窄解除もしくは大動脈-肺動脈短絡術の適応となる(図5-8-21).右室-肺動脈圧較差が50~100 mmHg(あるいは体動脈圧)の中等症では症状は多様であるが運動時のみに現れることが多い.軽症例では運動時にも拍出が保たれ,無症状で経過することが少なくない.
徴候・診断
軽症~中等症では心雑音により気づかれることが多い.2LISを中心とした領域に狭窄性雑音,駆出性クリックが聴取される.中等症以上では心電図上右室肥大がみられる.胸部X線所見は重症度によって異なり,最重症例では肺動脈基部は低形成となるが,中等症では狭窄後拡張によりむしろ拡大している.エコー検査が必須であり,形態的には弁自体の変形性状やドーム形成,圧負荷による右室肥大および中隔形態の変形が観察でき,ドプラによる肺動脈流速,三尖弁逆流速により重症度が評価できる.異形成の場合にはバルーン裂開が奏効しないことが多いので治療選択にも有用である.
管理・治療
ドプラによる圧較差推測が30 mmHg程度の軽症であっても成長に伴う重症化がみられることがあるので,きわめて軽度な例を除いて成長期までフォローが必要である.中等症以上は治療適応となるが,近年では侵襲の面からバルーン肺動脈弁裂開術が選択されることが多い.重症例/年長例ではときに治療前には隠れていた流出路狭窄が治療後に明らかになることがあるので,治療選択に注意を要する.また新生児最重症例では類洞交通や右室低形成の合併がときにあり,これらにより心筋虚血をきたす,十分な肺動脈心室として働けないと予想される場合にはFontan手術の適応となる.[山田 修]
■文献
Kan JS, White RI Jr, et al: The morphology of the right ventricular outflow tract after percutaneous pulmonary valvotomy: long term follow up. Br Heart J, 58: 239-244, 1987.
Lababidi Z, Wu J-R: Percutaneous balloon pulmonary valvuloplasty. Am J Cardiol, 52: 560-562, 1983.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報