改訂新版 世界大百科事典 「胎児赤芽球症」の意味・わかりやすい解説
胎児赤芽球症 (たいじせきがきゅうしょう)
erythroblastosis foetalis
新生児溶血性疾患ともいう。胎児ないし新生児期に溶血性貧血がおこるために生じる病気。多くは母子間に血液型不適合があり,母体で産生された子の赤血球の血液型に対する抗体が胎盤を通って胎児に移行し,胎児ないし新生児の赤血球を破壊し溶血をおこす。母子間血液型不適合妊娠はどの血液型でもおこりうるが,胎児赤芽球症をおこし臨床上重要なのはRh式とABO式血液型である。Rh型不適合では症状が強いことが多い。生まれて間もなく急速に黄疸が強くなり貧血が進行する。高度の黄疸を放置すると脳神経核がおかされて脳性麻痺を生じるので,交換輸血や光線療法が必要である。ABO型不適合では交換輸血を要することは少ない。胎児・新生児期では溶血性貧血がおこると赤芽球(赤血球母細胞)が血液中に多数出現する特徴があるのでこの名がつけられた。Rh不適合妊娠では母体感作の予防が可能となってきた。
執筆者:三輪 史朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報