自動販売機(読み)ジドウハンバイキ(英語表記)automatic vending machine

デジタル大辞泉 「自動販売機」の意味・読み・例文・類語

じどう‐はんばいき【自動販売機】

硬貨・紙幣またはこれに代わるカードを差し入れると、自動的に目的の物品やサービスが得られる機械。自販機

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精選版 日本国語大辞典 「自動販売機」の意味・読み・例文・類語

じどう‐はんばいき【自動販売機】

  1. 〘 名詞 〙 所定の硬貨や紙幣、または、これに代わるカードを挿入して望みのボタンを押すと自動的に物品が出てくる機械装置。乗車券、飲料、タバコなどの販売に使われる。
    1. [初出の実例]「うす汚れた男の児たちが、しきりにキャラメルの自動販売器をたたいてゐた」(出典:あさくさの子供(1939)〈長谷健〉三)

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改訂新版 世界大百科事典 「自動販売機」の意味・わかりやすい解説

自動販売機 (じどうはんばいき)
automatic vending machine

硬貨,紙幣,またはこれらに代わるカードなどを挿入することによって,自動的に物品やサービスを提供する機械。通貨操作式機械とも呼ばれ,その運営形態は無人方式であり,小売店の対面方式,スーパーマーケットのセルフサービス方式より一歩進んだ形態と考えられ,販売・サービス分野における代表的な省力機械である。

 機械の種類は販売される中身によって異なるが,大別すると物品自動販売機と自動サービス機に分けられる。おもな物品としては飲料,食品,タバコ,切符,切手,はがき,新聞,雑誌,日用品,雑貨などがあり,なかには1台の機械で数種類の異なった物品を販売するものや飲料などでホットとコールドを同時に販売するコンビネーション型の機種も見られる。また自動サービス機としては両替機,コインロッカー,傷害保険引受機,さらに金融機関などで使われている現金自動支払機,現金自動預金支払機などがある。このほか通貨で操作される機械として公衆電話機やジュークボックス,ゲームマシンなどの娯楽機もあるが,これらはその用途からみて,通常は自動販売機の範疇(はんちゆう)には含めない。

自動販売機の起源は古く,1世紀に活躍したアレクサンドリアのヘロンは《気体学》の中で,硬貨を入れるとその重みで栓が開き,数滴の水が出るという聖水自動販売機を紹介しており,エジプトの神殿に設置されたともいわれている。このアイデアはその後17世紀に入ってイギリスで復活し,さらに広く欧米に伝播(でんぱ)して,タバコ,切手,書籍,菓子などの自動販売機の考案に生かされた。

 日本では1888年に俵谷高七の発明によるタバコ自動販売機が最初で,この機械は10年間の期限付きで特許され,当時東京で開催された内国勧業博覧会に出品され好評を博した。俵谷が考案した中でもっとも有名な自動販売機は,1904年に製作した木製の〈自働郵便切手葉書売下機〉で,切手自動販売機とはがき自動販売機とポストの三つの機能を一体化したユニークな製品であった。この実物は今日でも東京の大手町の逓信博物館に陳列されている。

 歴史的にみると,1925年にアメリカのW.ローが考案した異なった値段の多品種を売るタバコ自動販売機が近代自動販売機の始まりといわれているが,自動販売機がいわゆる物珍しさの段階を過ぎ,本格的な実用化段階を迎えたのは欧米では30年前後で,日本では第2次世界大戦後の60年代以降のことである。日本において戦後の第1号機は,1953年10円青銅貨の発行と同時に登場した手動式入場券自動販売機で,昭和30年代前半にジュース,ガム,タバコなどの自動販売機が次々に市場に出回った。40年代に入ると,流通部門での省力化を背景に自動販売機の普及が急速に進み,1967年の硬貨改鋳を境に国鉄(現JR)では合理化対策の一環として近距離乗車券の発売を自動販売機で行うことにした。これによって国民の自動販売機に対する馴化(じゆんか)と利用がいっそう高まった。さらに昭和50年代には自動販売機のメカトロニクス化(機械とエレクトロニクスの結合)により技術の高度化が図られ,以後,中身商品,サービスの多様化と設置場所の拡散化によって持続的な高成長を遂げてきた。

自動販売機の構成は,金銭装置,指示装置,貯蔵・加工装置,販売装置からなる。金銭装置は自動販売機の心臓部に当たり,挿入された硬貨や紙幣の真偽判別と金種選別を行い,金額を計数し,必要に応じてつり銭を出す。もっとも重要な真偽判別は,硬貨については直径,厚み,重量,材質などを調べ,また紙幣については縦横の長さ,紙質,肖像や模様,透かし,印刷インクの色などを見分けて判別する。カードの場合には磁気情報によって暗証番号を照合し,金額確認を行う。指示装置は押しボタンで物品,サービスを選択するとその販売指示を出すところで,押しボタンの代わりに音声による応答システムを組み込んでいるものもある。貯蔵・加工装置はおもに物品を種々の形態で貯蔵し,必要に応じて調理,印刷などの加工を行う。販売装置は販売指示を受けて選択された物品,サービスを取出口へ送り出す役目をしている。

自動販売機は,一般的に人手不足の補償,人件費の節約,サービスアップに効用があるといわれているが,それぞれ使う立場によってメリットは異なる。例えば消費財メーカーなどの売る側にとっては拡販の利点があり,商店や事業所などの置く側にとっては省力化の効果,また一般の利用する側にとってはいつでも気軽に利用できるといった便利性が得られる。自動販売機が流通分野の合理化に果たした役割はきわめて大きく,その特質を要約すると,物品・サービスの24時間供給,購買手続の簡便迅速化,空間の有効活用(自動販売機の設置によって店舗空間として活用)があげられ,これらは従来の販売・サービス活動では達成しえなかった新しい価値といえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自動販売機」の意味・わかりやすい解説

自動販売機
じどうはんばいき
automatic vending machine

通貨(硬貨、紙幣)またはこれにかわるカードなどを挿入することによって、自動的に物品や情報、サービスを販売する機械。小売店の対面方式、スーパーマーケットのセルフサービス方式より一歩進んだ無人販売方式で、流通・販売部門での代表的な省力機械である。人手不足、人件費高騰の対応策として効果があり、休日・夜間も営業できる利点がある。ただし、同様に通貨で操作される機械として公衆電話機や娯楽機(ジュークボックス、ゲーム機など)もあるが、これらはその用途からみて自動販売機の範疇(はんちゅう)には含めない。日本での普及台数は1999年(平成11)現在で約550万台を数え、人口当りの普及率ではアメリカをしのいで世界第1位である。

[佐渡勝利]

種類

大別すると物品自動販売機と自動サービス機に分けられる。おもな物品自動販売機としては飲料、食品、たばこ、券類、切手・葉書、新聞・雑誌、日用品・雑貨、そのほか各種物品の複合・併売自動販売機などがあり、情報、サービス自動販売機のなかには、就職情報自動販売機やパソコンソフト自動販売機がある。同様に自動サービス機としては、自動両替機、自動写真撮影機、コインロッカーなどがある。このほか、ユニークなものとしては「無人コンビニ」がある。店舗全体を自動販売機化したもので、陳列ケースタイプの大型自動販売機が並べられ、その中に約2000品目の商品が収容され、好みの商品番号を押すと、ロボットアームが作動し、商品を取出し口に運ぶ仕組みになっており、自動販売機の新しい可能性を広げるものとして注目されている。

[佐渡勝利]

歴史

紀元前215年、エジプトの寺院に出現した聖水自動販売機が世界最古である。この機械はヘロンの発明ともいわれ、ドラクマ硬貨を入れるとその重みで栓が開き、数滴の水を出すという仕掛けであった。この種のアイデアはその後17世紀に入ってイギリスで復活し、広く欧米に伝わって、たばこ、切手、チューインガムなどの自動販売機の考案に生かされた。日本では、1888年(明治21)に俵谷高七(たわらやたかしち)の発明によるたばこ自動販売機が最初で、この機械は当時東京で開かれた内国勧業博覧会に出品され好評を博した。俵谷が考案したなかでもっとも有名な自動販売機は、1904年(明治37)に製作した木製の「自働郵便切手葉書売下機」で、全体が切手自動販売機と葉書自動販売機とポストの三機一体化形式のユニークなものであった。これは現在、東京・大手町の逓信(ていしん)総合博物館に陳列されている。歴史的にいうと1925年にアメリカのロウWilliam Roweが考案した異なった値段で多品種を売るたばこ自動販売機が近代自動販売機の始まりといわれているが、自動販売機がもの珍しさの段階を過ぎ、本格的な実用化段階を迎えたのは、欧米では1930年前後で、日本では第二次世界大戦後の1960年代以降である。

[佐渡勝利]

構成

自動販売機の構成は、金銭装置(選別・計数・釣銭(つりせん)装置からなる)、指示装置(制御装置)、貯蔵・加工装置、販売装置からなる。金銭装置は自動販売機の心臓部分で、挿入された通貨の真偽判別、金種選別を行い、金額を計数し、必要に応じて釣銭を出す。真偽判別のチェックポイントは、硬貨については直径、厚み、重量、材質等で、紙幣については縦横寸法などの外形的要素と肖像、模様、すかし、印刷インキの色などの紙幣特有要素を組み合わせて総合判別する。カード方式の場合には、カードの照合判別、金額確認を行う。指示装置は、押ボタンで商品を選択すると、その販売指示を出す。押ボタンのかわりに音声による応答システム(音声合成、音声認識)を組み込んだものもある。貯蔵・加工装置は、商品を種々の形態で貯蔵し、必要に応じて調理等の加工を行う。販売装置は、販売指示を受けて選択された商品を取出し口へ送り出す。一方、このような構成機能を全体的に発展させるものとして、「自動販売機情報管理システム」がある。このシステムは実際に設置展開されている個々の自動販売機と営業拠点のコンピュータとの間をネットワークでつなぎ、機内の販売情報や故障情報などをリアルタイムで収集し、機械の保守や商品の配送、補充を効率的に行うことで、売れ筋商品の把握、売り切れや故障による販売機会の損失を防ぐことを目的としている。

[佐渡勝利]


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百科事典マイペディア 「自動販売機」の意味・わかりやすい解説

自動販売機【じどうはんばいき】

硬貨や紙幣あるいはこれらに代わるカードなどを投入すると,自動的に所定の物品やサービスを提供する機械。硬貨・紙幣の種類,真偽を大きさ,厚さ,重量などで選別し,高額の場合は表面の凹凸,弾性,磁性などによる判定も行って,商品放出機構を作動させる。扱い商品は,菓子,飲料,食料,雑貨などのほか,鉄道乗車券,郵便切手,傷害保険契約証などの証票類,サービス提供ではジュークボックスや靴みがき,コイン・ランドリーなどきわめて種類が多い。数種の商品を扱うもの,食品類では冷蔵・加熱装置,証票類では印刷装置を備えるものなども多く,労働力節約のためその利用がますます拡大している。未成年による酒・タバコ購入をチェックできないなどの問題点が指摘され,販売時間の制限が行われるものもある。 アレクサンドリアのヘロンの《気体学》には聖水の自動販売機と思われる装置の記述があるが,自動販売機が実際に使われ出したのは17世紀以降のことである。異なる値段の多品種の商品を売る近代的な自動販売機は,1925年に米国でタバコの販売用に考案されたものが最初とされている。日本では1888年(明治21年)に俵谷高七が発明したタバコ自動販売機が最初。
→関連項目無店舗販売

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自動販売機」の意味・わかりやすい解説

自動販売機
じどうはんばいき
automatic vending machine

硬貨や紙幣の投入により自動的に商品を送り出す機械。その起源は古く,1世紀にアレクサンドリアの数学者であり機械学者であったヘロンが考案した「聖水自動販売機」がその初めといわれている。その後 17世紀になってイギリスで復活し,たばこや切手,書籍,菓子などの販売に利用された。本格的な利用は欧米では第2次世界大戦後で,日本では 1960年代に入ってからである。 67年に国鉄の近距離乗車券の販売に導入されて以降急速に普及した。自動販売機の効用には,人手不足の補完,人件費の節約,サービスの向上などがあり,特に 24時間サービスやすきま空間の有効利用など従来の販売形態とは異なる価値を創造した。

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世界大百科事典(旧版)内の自動販売機の言及

【無店舗販売】より

…商品を常設の店舗で販売せず,それ以外の方法で商品を販売する小売業の総称。カタログ,ダイレクト・メール,テレビや新聞の広告などを利用して,電話や郵便で顧客からの注文を受ける通信販売,セールスマンが商品あるいはサンプル,パンフレットを携帯して戸別に家庭を訪問し,商品を販売する訪問販売,小型トラックやワゴンタイプの車に商品を積み,広場や街角で販売する移動販売,ホテルや公の施設を利用し,不定期に商品を陳列して販売する展示会販売,在庫一掃や行事などとからめ,広い場所を借りてバーゲンセールを行う催事販売,一般家庭に知人や友人を集めて行われる実演販売や紹介販売,人の集まる所に置かれて定期的に商品の供給と代金の回収が行われる自動販売機による販売など,すべて無店舗販売である。生活協同組合や農業協同組合の組合員がグループでまとめて商品を購入する購買事業活動も,実質的に無店舗販売のうちに入れられよう。…

※「自動販売機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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