自家感作性皮膚炎
じかかんさせいひふえん
Autosensitization dermatitis
(皮膚の病気)
体の一部に強い皮膚炎(原発巣)が生じたあと、しばらくしてからその発疹の周囲から全身に細かい丘疹(散布疹)が現れる疾患です。
接触皮膚炎や貨幣状皮膚炎など急性の皮膚炎が悪化すると、その病変部で活性化したリンパ球がほかの離れた部位にも皮膚炎をもたらすと考えられています。急性皮膚炎に併発した細菌感染が誘因になることもあります。
じくじくした原発巣が現れて1~数週間後にその周囲や顔、体幹、四肢など全身に直径1㎜程度の丘疹が多発します。激しいかゆみがあり、かいたところに新たな散布疹が出てくることもあります。細かい散布疹が融合して硬貨大になったり、手のひらや足の裏では大きな水ぶくれになることもあります。
全身に細かい丘疹が現れ、原発巣がなく周囲の人に同じ症状がみられる場合、虫さされや疥癬の可能性があります。とくに疥癬は伝染性が強いので皮膚科での顕微鏡検査が必要です。
水痘などのウイルス感染症でも全身にかゆみのある細かい丘疹が急激に現れてきますが、発熱やかぜ症状などほかの症状の有無から見分けます。
ステロイド外用薬を原発巣と散布疹に塗って皮膚の炎症を和らげます。じくじくした発疹には亜鉛華単軟膏を布に伸ばし重ねて貼ると効果的です。かゆみに対しては抗ヒスタミン薬を内服します。
原発巣が大きい時や散布疹の出る勢いが強い時には、ステロイド薬を短期間内服することがあります。原発巣が治るとともに散布疹は軽くなっていきます。
原発巣を適切に治さなければ散布疹は勢いよく増えていき、かゆみのために眠れなくなるなど、体調にも悪影響を及ぼすので、早めに適切な治療を受けることが大切です。
加藤 則人
自家感作性皮膚炎
じかかんさせいひふえん
Autosensitization dermatitis
(子どもの病気)
すでにある湿疹病変の原発巣が何らかの原因で急性増悪し、全身のほかの皮膚に小さな丘疹や紅斑がばらまかれたように多発する(撒布疹)状態です。
元の病変は接触皮膚炎や下腿の貨幣状湿疹が多く、原因としては変性した皮膚蛋白や細菌成分が新たな抗原となり、感作されて全身性に発症すると考えられています。原発巣の湿疹に続いて、漿液性のみずみずしい丘疹や紅斑が全身に多発し、強いかゆみを伴います。
元の病変の治療を行いつつ、撒布疹に対しても抗ヒスタミン薬の内服薬とステロイド外用薬を使います。重症例ではステロイド薬の内服を行うことがあります。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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家庭医学館
「自家感作性皮膚炎」の解説
じかかんさせいひふえん【自家感作性皮膚炎 Autosensitization Dermatitis】
[どんな病気か]
貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)や接触皮膚炎(せっしょくひふえん)などの湿疹・かぶれを治療しなかったり、あるいはまちがった治療によってこじらせると、全身にとてもかゆい小さなぶつぶつが突然生じることがあります。「湿疹が湿疹を呼んだ」わけです。
これは、湿疹の患部で変性した皮膚たんぱくが抗原(こうげん)となり、全身がこのたんぱくに感作される(アレルギー反応をおこす)ためにおこると考えられています。このことから、自家感作性皮膚炎と呼ばれています。
発疹(ほっしん)が全身にちりばめたように広がり、眠れないほどかゆくなることもしばしばあります。
[治療]
必ず皮膚科を受診し、はっきりとした診断を受けることがたいせつです。副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬の外用、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服によって治療します。
症状が激しいときは、短期間、副腎皮質ホルモン薬を内服することもあります。原因となる、もとの皮膚病の治療もたいせつです。もとの皮膚病が治ると、全身のぶつぶつもきれいに消えます。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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自家感作性皮膚炎
じかかんさせいひふえん
autosensitive dermatitis
湿潤性の湿疹などが細菌感染などで急性増悪したときに,これに続いて,離れた部位に二次的に激痒を伴う丘疹,漿液性丘疹,膿疱などが多発する状態をいう。これらの皮疹を撒布疹という。撒布疹は融合し,原発の湿疹などとそっくりの状態になることがある。原発となる疾患としては下腿の貨幣状湿疹,うっ滞性皮膚炎が最も多く,次いで熱傷潰瘍,びらん性湿疹性病変などがある。原因は,原発病巣で二次感染によってつくられたなんらかの物質に対する抗体が,血流によって撒布されるためという説が有力であるが,この抗体は一部でしか証明されていない。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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