貨幣状湿疹(読み)かへいじょうしっしん(英語表記)eczema nummulare

改訂新版 世界大百科事典 「貨幣状湿疹」の意味・わかりやすい解説

貨幣状湿疹 (かへいじょうしっしん)
eczema nummulare

10円硬貨くらいの赤銅色の境界明りょうなかゆい円盤状の皮膚炎局面が多発する疾患。湿疹の名があるように,かいていると表皮内にできた水疱が破れて汁が出る。この病気本態の多くはアレルギー性接触皮膚炎で,原因として,6価クロムイオンCr6⁺,ニッケルイオンNi2⁺,コバルトイオンCo3⁺などの金属アレルゲンがよく知られている。またセッケン中の精油ヒドロキシシトロネラールが原因アレルゲンと考えられるような症例もある。悪化すると全身にかゆい小水疱が散在的に多発するが,これをイッド反応(id反応)という。治療としては,副腎皮質ホルモン軟膏がよく用いられるが,連用してもよくならないときは,アレルゲンに化粧品や家庭・工業用品を用いたパッチテストを行うとよい。この結果に従って,アレルゲンをぬいたセッケンを使ったり,皮革,セメントを遠ざけることで,症状がよくなることがある。
湿疹
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

家庭医学館 「貨幣状湿疹」の解説

かへいじょうしっしん【貨幣状湿疹 Nummular Eczema】

[どんな病気か]
 貨幣(コイン)状の円形をした、とてもかゆい湿疹です。赤いぶつぶつがあったり、ジュクジュクしていることもあります。とくに足の脛(すね)にできることが多いのですが、膝(ひざ)の周囲、手背(しゅはい)、体幹(たいかん)(胴体)にできることもあります。
 高齢者では、肌が乾燥してかゆくなる冬場に多く、小児では虫刺されをひっかいているうちにできることもよくあります。
 いったんよくなっても、すぐに強いかゆみがぶりかえし、治りにくくなることが多い皮膚病です。また、長い期間この病気でいると、全身の自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)(「自家感作性皮膚炎」)に発展しやすいので、早めに皮膚科で治療を受けましょう。
[治療]
 副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド)薬の外用、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服します。細菌感染がおこって患部が少しにおうときには、抗生物質の外用と内服を併用します。
 患部は清潔に保ち、軟膏(なんこう)を塗った後、ガーゼで保護するようにしましょう。保護することによって、軟膏の効果が増すばかりでなく、ひっかいて局所を傷つけたり、細菌感染がおこるのを防止することができるからです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「貨幣状湿疹」の解説

貨幣状湿疹
かへいじょうしっしん
Nummular eczema
(子どもの病気)

 湿疹のひとつで、コイン程度の大きさの円形でかゆみの強い紅斑を主症状とし、下腿伸側にできやすい病気です。原因は不明ですが、アトピー性皮膚炎の症状としてみられることもあります。

 かゆみが強いのでかいてしまい、適切な治療をしないと治りにくい病気です。自家感作性(じかかんさせい)皮膚炎に進展することがあります。

 治療はステロイド軟膏が有効で、かゆみを止めるために抗ヒスタミン薬を内服することがあります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貨幣状湿疹」の意味・わかりやすい解説

貨幣状湿疹
かへいじょうしっしん
nummular eczema

湿疹性病変のうち,境界鮮明な貨幣大の円形の湿疹が1個から数個,散在するものを特に貨幣状あるいは局面性湿疹と呼ぶ。丘疹,漿液性丘疹,小水疱が多発して融合することが多く,激しいかゆみを伴う。掻くことでびらんし,痂皮 (かひ) ができることも多い。好発部位は下腿,前腕などで,乾皮症性湿疹,固定性じんま疹,うっ滞性皮膚炎などに続発することが多い。原因不明であるが細菌が関係しているという説もある。冬期に悪化する。しばしば自家感作性皮膚炎の原発巣となる。

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