舟に刻して剣を求む(読み)ふねにこくしてけんをもとむ

故事成語を知る辞典 「舟に刻して剣を求む」の解説

舟に刻して剣を求む

時勢の移ることを知らず、いたずらに古いしきたりを守ることのたとえ。

[使用例] 過去の文学は未来の文学を生む。生まれたものは同じ訳には行かぬ。同じ訳に行かぬものを、同じ法則ひんしつせんとするのは舟を刻んで剣を求むるの類である[夏目漱石作物批評|1907]

[使用例] 人間のなまなかの思想倫理では到底その正体をつかめないこと、舟に刻して剣を求むるの類であろう[石坂洋次郎*若い人|1933~37]

[由来] 「呂氏春秋―慎大覧・察今」に載せる話から。時代ははっきりしませんが、紀元前数世紀の中国でのこと。ある人が舟で川を渡っているときに、川の中に剣を落としてしまいました。あわてたその人は、舟のへりに刻み目を付けて、「私の剣が落ちた場所はここだ」と、したり顔。舟が止まったあと、そこから水に潜って剣を探しましたが、もちろん舟はだいぶ動いた後。見つからなかったということです。

[解説] ❶原文では、このあと、「昔ながらの政策で国を治めようとするのは、これと同じだ。時代は変わっているのに、政策はもとのまま。うまくいくはずがない」と述べられています。ただし、故事成語としては、政治についてだけではなく、広く、時代遅れの方法で何かをしようとする場合に使われています。❷この人、あとで水に入るつもりがあるのなら、その場ですぐに飛び込めばよかったはず。そう考えると、このエピソードからは、緊急事態には素早く対応すべきで、後から手を打ってもとんちんかんなことになるだけだ、という教訓を引き出すこともできるでしょう。

〔異形〕船端に刻を付けて刀を尋ねる/剣を落として船を刻む/刻舟求剣/刻舟。

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ことわざを知る辞典 「舟に刻して剣を求む」の解説

舟に刻して剣を求む

時勢の移ることを知らず、いたずらに古いしきたりを守ることのたとえ。

[使用例] 人間のなまなかの思想や倫理では到底その正体をつかめないこと、舟に刻して剣を求むるの類であろう[石坂洋次郎*若い人|1933~37]

[解説] 舟の上から川の中に剣を落とした者が、舟の流れ動くことを考えず、落ちた位置の印を舟ばたにつけて、岸についてから印の下を探そうとしたという「呂氏春秋―慎大覧・察今」の故事によることば。

〔異形〕船端に刻を付けて刀を尋ねる/剣を落として船を刻む/こくしゅう

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