故事成語を知る辞典 「舟に刻して剣を求む」の解説
舟に刻して剣を求む
[使用例] 過去の文学は未来の文学を生む。生まれたものは同じ訳には行かぬ。同じ訳に行かぬものを、同じ法則で
[使用例] 人間のなまなかの思想や倫理では到底その正体をつかめないこと、舟に刻して剣を求むるの類であろう[石坂洋次郎*若い人|1933~37]
[由来] 「呂氏春秋―慎大覧・察今」に載せる話から。時代ははっきりしませんが、紀元前数世紀の中国でのこと。ある人が舟で川を渡っているときに、川の中に剣を落としてしまいました。あわてたその人は、舟のへりに刻み目を付けて、「私の剣が落ちた場所はここだ」と、したり顔。舟が止まったあと、そこから水に潜って剣を探しましたが、もちろん舟はだいぶ動いた後。見つからなかったということです。
[解説] ❶原文では、このあと、「昔ながらの政策で国を治めようとするのは、これと同じだ。時代は変わっているのに、政策はもとのまま。うまくいくはずがない」と述べられています。ただし、故事成語としては、政治についてだけではなく、広く、時代遅れの方法で何かをしようとする場合に使われています。❷この人、あとで水に入るつもりがあるのなら、その場ですぐに飛び込めばよかったはず。そう考えると、このエピソードからは、緊急事態には素早く対応すべきで、後から手を打ってもとんちんかんなことになるだけだ、という教訓を引き出すこともできるでしょう。
〔異形〕船端に刻を付けて刀を尋ねる/剣を落として船を刻む/刻舟求剣/刻舟。
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