航空貨物(読み)こうくうかもつ

改訂新版 世界大百科事典 「航空貨物」の意味・わかりやすい解説

航空貨物 (こうくうかもつ)

航空機で輸送される貨物(手荷物を除く)をいう。商品サンプル,ニュース原稿,生鮮食料品などスピードを利用しての貨物輸送はプロペラ機時代からあったが,旅客機の下部貨物室を使う副次的輸送であった。しかし,1960年代のジャンボジェット機,70年代の大型貨物専用機の登場による輸送力の増大とコストの低下,また航空貨物輸送に適するIC製品や光学機器など,重量的には小さくとも付加価値の高い商品輸送に対する市場側の要求から航空貨物輸送は急増し,アメリカでは貨物専用会社も誕生することとなった。日本出入の国際航空貨物の主要品目は,コンピューター,自動車部品,通信・音楽機器,IC部品,医薬品,生鮮食品等となっている。B747-200Fジャンボ貨物機は89tの搭載力をもち,8×8×10フィート(1フィートは約30.5cm)のコンテナ26個,パレット18個の搭載が可能である。航空貨物は空港間だけでなく,空港外の大規模な貨物処理施設の利用,地上交通機関等との連絡を含む,ドアからドアへの円滑な輸送を実現するための一貫輸送体制を望む声も高まっている。なお,航空機への貨物搭載方式にはバルク・ローディング(ばら積み方式),パレット・ローディング,コンテナ・ローディングの3方式がある。1995年度の日本の国内航空貨物輸送量は輸送トン数が96万t(総輸送トン数の0.015%),輸送トンキロが9兆2400万トンキロ(総輸送トンキロの0.2%)である。国内・国際とも航空貨物輸送量は重量でみるかぎりきわめて少ないが,航空貨物は高価格のものが多いため,金額ではかなりの数字を占めている。航空輸送品目の特殊性からも,また,航空貨物の実態を正確に把握するためにも,現状分析,将来予測には重量よりも金額ベースによる分析が望まれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「航空貨物」の意味・わかりやすい解説

航空貨物
こうくうかもつ
air cargo

貨物運送約款に基づき、空港から空港まで航空輸送される貨物をいう。航空貨物は航空郵便輸送とともに航空機の創成期から専用機で輸送されてきた。第二次世界大戦後、経済交流の増大と航空機の大型化により、定期旅客便の貨物室スペースの利用が進んだ。付加価値の高い宝石、部品、精密機器、出版印刷物、生鮮食品などが、航空貨物の迅速性、輸送の安全性、経済性を評価し、国際海運や国内陸運より転移したり利用拡大された。これらの航空貨物の集荷は、日本ではおもに混載業者とよばれる利用航空運送事業者が、政府の事業認可と国際航空運送協会(IATA=イアタ)などの代理店認可を受け、実施している。航空貨物代理店は航空会社を代理して約款などに基づき航空貨物運送という「商品」を販売するのに対し、混載業者は独自に荷送人と契約して運賃の「混載差益」を得る。ボーイング747F型貨物専用機では、最大離陸重量(離陸することができる最大総重量)から燃料など必要な重量を引いて搭載可能重量を決める。貨物専用機は、旅客機の一般貨物室に比べ、機体の強化がなされ、コンテナ搭載方式による自動化や陸海空の一貫輸送化が図られている。

[松下正弘]

『日本航空協会編・刊『改訂版 航空輸送概論』(1980)』『山野辺義方著『航空業界』(教育社新書・産業界シリーズ)』

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