日本大百科全書(ニッポニカ) 「航空路監視レーダー」の意味・わかりやすい解説
航空路監視レーダー
こうくうろかんしれーだー
air route surveillance radar
航空管制に使用されるレーダーのうち、航空路を飛行している航空機の飛行状況を監視し、管制を行うための長距離レーダーを航空路監視レーダー(air route surveillance radarを略してARSR)という。航空路を十分に見通せる山頂に設置されており、半径約200海里(マイル)(約370キロメートル)以内の航空機を探知して、遠隔地の管制室にあるブラウン管上に各航空機の現在位置などの情報を表示する。このレーダーに使用される周波数は1200~1350メガヘルツ、出力は2メガワット、有効範囲は370キロメートルである。
現在、日本では、釧路(くしろ)(北海道)、横津岳(北海道)、八戸(はちのへ)(青森県)、上品(じょうぼん)山(宮城県)、小木の城(おぎのじょう)(新潟県)、山田(千葉県)、箱根(神奈川県)、三河(愛知県)、三国(みくに)山(和歌山県)、今(いま)の山(高知県)、平田(島根県)、三群(さんぐん)山(福岡県)、加世田(かせだ)(鹿児島県)、奄美(あまみ)(鹿児島県)、八重(やえ)岳(沖縄県)、宮古(みやこ)島(沖縄県)の計16か所に、二次監視レーダー(SSR secondary surveillance radar)を併せて設置されている。
日本国内の札幌、東京、福岡、那覇(なは)の四つの航空交通管制部ではARSRにより、覆域内の航空機の情報をレーダースコープ上に連続的に表示させ、航空路管制業務を行っている。今後さらに、第二東北(青森県)および第二中国(島根県)のARSR設置が計画されている。通常、ARSRの設置というと、レーダーアンテナおよびデータ中継装置の設置を意味する。レーダーのディスプレー画面(レーダースコープ)は、国内の東京、札幌、福岡、那覇の管制部に設置されている。また、洋上航空路レーダー覆域を拡充するために、SSRの有効通達距離を200海里から250海里に拡大したORSR(oceanic route surveillance radarの略称)が、いわき(福島県)、福江(長崎県)および八丈(はちじょう)島(東京都)に設置されている。
[青木享起・仲村宸一郎]