芹摘む(読み)セリツム

デジタル大辞泉 「芹摘む」の意味・読み・例文・類語

せり・む

平安時代に慣用された歌語宮中庭掃除の男が、を食べる后を御簾みすの隙から見て思いを寄せ、芹を摘んでは御簾の辺りに置くが、そのかいもなく、ついに焦がれ死にしたという故事から》思いが通じない。思いどおりにならない。
「―・みし世の人にも問はまほしき御心の中」〈狭衣・三〉
[類語]あわびの片思い落花情あれども流水意無し思うに別れ思わぬに添う成るはいやなり思うは成らず

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「芹摘む」の意味・読み・例文・類語

せり【芹】 摘(つ)

  1. 思う心を相手に届けようとして、かなわぬ苦労をする。平安時代以後は慣用的歌語として用いられた。
    1. [初出の実例]「御簾のもとに集まり出でて、見たてまつるをりはせりつみしなどおぼゆる事こそなけれ」(出典:枕草子(10C終)二四五)

芹摘むの補助注記

由来については諸説ある。昔、宮中の庭掃除の男が、風で御簾(みす)が吹き上げられたときに后がセリを召し上がっているのを見て恋におちいり、セリを摘んで御簾のあたりに置いたが、年経ても思いが通らないので、ついにこがれ死にしたという物語(俊頼髄脳)、まふくだ丸という童子が、池のほとりでセリを摘んでいるとき、主人の姫君を見て恋におちいり、こがれ死のうとしたのを姫君が聞いてあわれがり、手習い学問をすれば意に従おうといい、童子は学問ができるようになった。姫君はさらに出家をすすめ、童子はその修行中、姫君が死んだのを知り、道心を起こして尊い聖(ひじり)となった(奥義抄)、庭の草むしりの者が、その家の姫君のセリを食べるのを見て恋におちいり、セリを摘んでたてまつった(和歌童蒙抄‐七)など。

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