茜さす(読み)アカネサス

デジタル大辞泉 「茜さす」の意味・読み・例文・類語

あかね‐さす【×茜さす】

[枕]茜色に鮮やかに照り映える意から、「日」「昼」「紫」「君」などにかかる。
「―日は照らせれど」〈・一六九〉
「―紫野行き標野しめの行き」〈・二〇〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「茜さす」の意味・読み・例文・類語

あかね‐さ・す【茜さす】

  1. [ 1 ] 〘 連語 〙 茜色がさす。赤く照り映える。
    1. [初出の実例]「日の入るは紅(くれなゐ)にこそ似たりけれ〈観暹〉 あかねさすとも思ひけるかな〈平為成〉」(出典:金葉和歌集(1124‐27)連歌・六四四)
  2. [ 2 ]
    1. 赤い色がさして光り輝く意から、「日」「昼」「光」「朝日」等にかかる。
      1. [初出の実例]「茜刺(あかねさす)日は照らせれどぬばたまの夜渡る月の隠らく惜しも」(出典:万葉集(8C後)二・一六九)
      2. 「あかねさす光は空にくもらぬをなどてみ雪に目をきらしけむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
    2. 紫色、蘇芳(すおう)色との色彩としての類似から、それぞれ同音の「紫草(むらさき)」および地名周防(すおう)」にかかる。
      1. [初出の実例]「茜草指(あかねさす)紫野行き標野(しめの)行き野守は見ずや君が袖振る」(出典:万葉集(8C後)一・二〇)
    3. 顔が赤く照り輝いている意で、「君」にかかる。紅顔、紅頬(こうきょう)の意のほめことば。一説に、赤心、すなわち真心のある意でかかるという。
      1. [初出の実例]「飯(いひ)(は)めどうまくもあらず行き行けど安くもあらず赤根佐須(あかねサス)君が情し忘れかねつも」(出典:万葉集(8C後)一六・三八五七)
  3. [ 3 ] 〘 名詞 〙 日の出をいう女房詞。〔女中言葉(1712)〕

茜さすの語誌

( 1 )(あかね)(=赤根)は赤色染料に用いたことから色名となり、そのような色になることから「日」「昼」にかかる枕詞になったものと思われる。
( 2 )[ 二 ]に挙げた「万葉‐三八五七」の例は光り輝く意から、美しい君にかけたものといわれ、[ 二 ]に挙げた「万葉‐二〇」の例は、普通紫が赤みを帯びている、などの意で、「紫」の枕詞とされているが、あるいは、これも日に照って光り輝いている意から、「紫野」にかけたのではないかとも考えられる。

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