藤幡正樹(読み)ふじはたまさき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤幡正樹」の意味・わかりやすい解説

藤幡正樹
ふじはたまさき
(1956― )

CGアーティスト。東京都生まれ。1979年(昭和54)東京芸術大学美術学部デザイン科卒業、1981年同大学院美術研究科修士課程修了。在学中より先端技術を活用した美術制作に強い関心を持つ。大学院修了後の1982~1984年、映像制作会社セディックでCG部門の設立に参加した後、1985年には制作会社フロッグスを設立した。

 1980年代は主にIC集積回路)を組み込んだおもちゃコンピュータ・アニメーションなどを制作。1983年には『Mandara1983』が「ビデオ・カルチャー・カナダ」展でCG部門グランプリを受賞するなど、早くから注目を集めた。その後1990年代以降はコンピュータのインターフェースを通して観客の参加を促すインタラクティブ・アート作品の制作を中心に活動している。

 藤幡は、コンピュータは単に便利なツールではなく自分の思考を映す鏡であると考え、コンピュータのアルゴリズム一種の美を見いだしている。そしてコンピュータを自然や環境と人間をつなぐ媒介として位置づけ、コンピュータ・アートの可能性を追求した試みは、国際的にも高く評価されている。1992年(平成4)に建築家入江経一と共同した「脱着するリアリティ」(スパイラルガーデン、東京)は何も展示されていない空間で赤外線ヘッドホンをつけた観客が動き回りながら情報をキャッチする仕掛けとなっており、展覧会という作品発表の形式を打ち破った試みとして注目された。

 またコンピュータ・ネットワークと現実とを結んで展開された作品『グローバル・インテリア・プロジェクト#2』(1996)は、バーチャル空間と現実空間の関係を問う作品の構造が高く評価され、オーストリアリンツで開催されたメディア・アートの国際展アルス・エレクトロニカでグランプリを受賞した。1997年に発表された、革装の書籍の映像にライトペンで触れると物が動き出す『ビヨンド・ページ』はZKMの恒久展示作品となり、翌1998年には同所滞在期間中にネットワーク作品『Nuzzle Afar』(後に『off-Sense』として展開)を発表、ドイツオランダ、オーストリア、日本の4か国に向けて発信した。ネットワーク上のプロジェクトとしては、他には『Field-works』(1992~ )、『Light on the Net』(1996~ )などが挙げられる。2001年の横浜トリエンナーレでは『グローバル・インテリア・プロジェクト』の続編を発表している。

 作品集に『ジオメトリック・ラブ』(1987)、『Forbidden Fruits』(1991)、著書に『巻き戻された未来』(1995)、『カラー・アズ・ア・コンセプト』(1997)、『コンピュータ・グラフィックスの軌跡』(1998)、『アートとコンピュータ――新しい美術の射程』(1999)などがある。1990年には慶應義塾大学環境情報学部の開設と同時に専任講師、後に助教授、教授を歴任。1999年には東京芸術大学美術学部に新設された先端表現芸術科の教授、のちに同大学院映像研究科教授に就任。

[暮沢剛巳]

『『ジオメトリック・ラブ』(1987・Parco出版局)』『『Forbidden Fruits』(1991・リブロポート)』『『巻き戻された未来』(1995・ジャストシステム)』『『カラー・アズ・ア・コンセプト』(1997・美術出版社)』『『コンピュータ・グラフィックスの軌跡』(1998・ジャストシステム)』『『アートとコンピュータ――新しい美術の射程』(1999・慶應義塾大学出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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