日本大百科全書(ニッポニカ) 「リンツ」の意味・わかりやすい解説
リンツ
りんつ
Linz
オーストリア北部、オーバーエスターライヒ州の州都。標高264メートルの地にあり、市街はドナウ川にまたがって発達する。人口18万3504(2001)で、首都ウィーン、グラーツに次ぐオーストリア第三の都市。すでにローマ時代に要塞(ようさい)があり、レンティアLentiaの名でよばれ、1210年にバーベンベルク家の所領になってから都市域が拡大し、ドナウ川による東西交通と、ザルツカンマーグートからボヘミアに至る「塩の道」の南北交通との交差点として栄えてきた。1938年に建設された製鉄工場を中心に、第二次世界大戦中から工業の集積があり、オーストリア有数の重化学工業都市である。鉄鋼、化学肥料、薬品、機械、船舶、タバコ、ガラス製品など多様な製品を産する。旧市域には大聖堂、王宮博物館、州庁舎などバロック、ゴシック、ルネサンスの様式の建物が残る。ほかにリンツ城、8世紀のロマネスク様式を残す聖マルティン教会などがある。
[前島郁雄]