日本大百科全書(ニッポニカ) 「ZKM」の意味・わかりやすい解説
ZKM
ぜっとけーえむ
ドイツのカールスルーエ市にあるメディア・アートの総合研究・展示施設。1997年に開館した。正式名称はZentrum für Kunst und Medien Karlsruhe(カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター)。カールスルーエ市と、市が属するバーデン・ウュルテンベルク州が運営費を負担する。同施設は、現代美術館、メディア美術館のほか、視覚メディア研究所、音楽・音響研究所、メディア・ライブラリーの複合施設として開館した。2016年以降は現代美術館とメディア美術館は一体的に運営されている。2017年、作品の制作とメディア技術の調査をおもに行う「ハーツ・ラボ」が視覚メディア研究所と音楽・音響研究所を統合するかたちで新たに設立された。
ZKMは1988年に設立が決定され、翌1989年以降、建築史家ハインリヒ・クロッツHeinrich Klotz(1935―1999)が10年にわたり館長を務め、センターの土台を築いた。1999年からはメディア・アートの研究者ペーター・ワイベルPeter Weibel(1944― )が館長となり、カールスルーエ工科大学と連携し、新商品を開発するなど産業とのかかわりを強める。
建物は、1989年に設計競技が行われ、オランダの建築家レム・コールハースによるガラスの立方体の案が選ばれた。ところが、おもに予算上の理由からこの計画は中断され、1914~1918年に建てられた巨大な旧軍需工場の建物を改築して使用することになり、ハンブルクの建築事務所シュベーガー&パートナーが改修を行った。現代美術館とメディア美術館は合わせて7000平方メートルの展示空間をもつ。
現代美術館は1990年より収集を始め、写真、ビデオ、ホログラフィーなど技術と美術との関係を問う作品に焦点を合わせ、ナム・ジュン・パイク、ビル・ビオラなどの作品を所蔵する。メディア美術館はインタラクティブなメディア・アートの世界最大のコレクションを有し、観客参加型の展示を多く行う。また、視覚メディア研究所と音響・音楽研究所は、毎年世界中から多くのアーティストを招聘(しょうへい)し、一定期間創作活動に専念させるアーティスト・イン・レジデンスを行ってきた。メディア・ライブラリー部門は、映像作品、電子音楽を中心とする現代音楽のビデオやCD、20世紀美術に関する文献を収集、公開している。
また、同敷地内にはカールスルーエ市立美術館があるほか、1992年に設立されたカールスルーエ州立造形大学があり、ZKMと連携して活動している。
[鷲田めるろ 2021年12月14日]