日本大百科全書(ニッポニカ) 「虚偽の出生届」の意味・わかりやすい解説
虚偽の出生届
きょぎのしゅっしょうとどけ
親の実子であると偽って提出された出生届。子が他人夫婦間の嫡出子として届け出られる場合がある。未婚の母が子を生んだ事実を隠しておくとか、一種の迷信によるとか、単なる養子ではなく自分の実子にするつもりでとか、いろいろな場合があり、1948年(昭和23)の新戸籍法の制定までは、出生届に現在のような出生証明書をとくに添える必要がなかったところから、このような届がかなり行われていたようである。
このような出生届は虚偽であるから、それにより夫婦間の嫡出子となるわけはなく、利害関係人は、いつでも親子(しんし)関係不存在確認の審判あるいは判決によって、これを否認することができるとされている。学説には、場合によっては、その間に養子縁組の成立ないしは内縁養子(事実上の養子縁組)の成立を認めてはどうかというものもみられるが、判例は反対の立場を示した(最高裁判所判決昭50・4・8、民集29巻4号401頁)。そこで、民法等の一部を改正する法律(昭和62年法律第101号)により、特別養子制度が設けられた(民法817条の2~11)。この特別養子制度とは、幼年者が養子になる場合においては、子の福祉を図るために、養子と実親との親族関係を消滅させる(同法817条の9)とともに、戸籍上も、一見しただけでは、養子があたかも養親の実子であるかのように記載される「特別養子」の地位を与えるものである。
[山本正憲・野澤正充]