蛍光X線(読み)ケイコウエックスセン

デジタル大辞泉 「蛍光X線」の意味・読み・例文・類語

けいこう‐エックスせん〔ケイクワウ‐〕【蛍光X線】

物質X線を照射したときに放射される特性X線一種。物質の構成原子内殻にある電子がはねとばされて空所ができ、この空所に外殻の電子がとび移るときに放出される。原子の種類によって特定波長の蛍光X線を放射するため、元素分析に用いられる。→蛍光X線分析

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蛍光X線」の意味・わかりやすい解説

蛍光X線
けいこうえっくすせん

X線で物質を照射すると、物質に含まれる各原子のK、L殻などの内殻電子が励起され、原子はイオン化される。それによって生じた空孔外側の殻の電子が落ち込んで、遷移エネルギーが特性X線として放射される。この過程により生ずる特性X線を蛍光X線という。空孔が電子によって埋められる際、X線を放射せず、外側の殻の電子がそのエネルギーをもらい、原子外に放出される過程もある。この放出される電子をオージェ電子という。この二つの競合過程で、蛍光X線が放射される割合(蛍光収量)は、軽元素では小さく、原子番号が大きくなるほど増す。

 蛍光X線の発生は、原子核に近い殻の間での電子の遷移に基づくものであるから、その波長は原子の種類あるいは原子番号だけに関係し、化合物でも結合状態にほとんどよらない。そのため、蛍光X線のスペクトルを調べると、それを放射する元素の原子番号を知ることができ、物質の元素分析や組成分析に利用される。

[菊田惺志]

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化学辞典 第2版 「蛍光X線」の解説

蛍光X線
ケイコウエックスセン
fluorescent X-ray

X線管球の対陰極からの一次X線を物質に照射すると,その物質に含まれる元素に固有な波長の特性X線を発する.この特性X線をとくに蛍光X線とよぶ.放射される蛍光X線は,回折結晶およびX線検知管を備えたX線分光器によって各波長ごとに分光し,X線スペクトルを得る.分析に用いられるX線の波長範囲は,約1.2 nm から0.03 nm にわたる.特性X線は,Na~Euの間のK系列X線,Zn~UのL系列X線,Ce~UのM系列X線などである.試料面を照射する一次X線は,普通,連続X線で,これはかなり深いところまで侵入するものと考えられるが,一般分析では表面から十分の数 mm 程度とされている.蛍光X線スペクトルの強度から物質中の元素の定量分析も可能である.ことに微量成分の分析は,試料を分解することなく非破壊で,迅速かつ正確に行える.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「蛍光X線」の意味・わかりやすい解説

蛍光X線 (けいこうエックスせん)

X線

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世界大百科事典(旧版)内の蛍光X線の言及

【X線】より

…このようにX線が結晶によって回折されるのは,その波長が固体の原子間隔と同程度のためである。 X線が物質にあたった場合,気体の電離,物質からの電子や二次X線(蛍光X線と散乱X線)の放出,あるいは散乱されたX線の波長変化が生ずるが,これらの現象はX線が粒子(光子)としてふるまい,物質を構成している原子内の電子に衝突してそのエネルギーを電子に与えることに基づいている。X線の粒子としてのエネルギーは,振動数をν,プランク定数をhとしてhνで与えられ,これが電子を原子に束縛させているエネルギーより十分大きい場合,電子は原子外にたたき出され,電離や物質からの電子(光電子)の放出が起こり,エネルギーが小さい場合は電子を外側の軌道に押し上げることになる。…

※「蛍光X線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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