血管撮影(読み)けっかんさつえい(その他表記)angiography

改訂新版 世界大百科事典 「血管撮影」の意味・わかりやすい解説

血管撮影 (けっかんさつえい)
angiography

動脈および静脈から成る血管系の形態を描出するX線検査法である。血管を描出するためには,動脈あるいは静脈の中に有機ヨード造影剤を注入してコントラストをつけた形でX線撮影を行う必要があり,この注入の方法により,(1)直接穿刺(せんし)法,(2)経皮カテーテル法,(3)皮膚切開直視下カテーテル法の3種がある。このうち経皮カテーテル法が現在では最もひろく用いられている。これは,特殊な針で血管を穿刺したあと,やわらかい金属のガイドワイヤにX線不透過性のポリエチレンカテーテル(細い管状のもの)をかぶせて血管内に挿入し,後にガイドワイヤを抜去することによって血管内にカテーテルのみを残す方法である。大腿動脈からこのカテーテルを挿入することが最も多い。テレビ透視下にカテーテルの先端を目的の部位まですすめたあとヨード造影剤を注入し,多数のX線フィルムで連続的に撮影するか,あるいはシネ撮影を行って,血管の形態と血行動態とを観察する。血管撮影が施行されるのは,血管自体の病気,たとえば動脈硬化性閉塞動脈瘤,静脈瘤,血栓症,先天奇形外傷などの診断を目的とするほかに,脳,肝臓腎臓のような実質性臓器の支配血管を撮影することによって,これらの臓器内の良性および悪性腫瘍の診断を行うことを目的とする場合がある。心臓の病変を診断する目的で行うときは心血管撮影angiocardiographyあるいは冠動脈撮影として,他の一般の血管撮影と区別することがあるが,方法は基本的には同一である。

 現在血管撮影に用いられている造影剤はベンゼン核にヨード3原子が結合したトリヨード化合物であり,これが血管内に注入された状態でX線撮影を行うと,ヨード原子によるX線の吸収が大きいため,造影剤の入っていない,濃く表された他の人体組織の中から血管のみが浮き出したかたちで描出される。

 血管撮影の手技は病変の診断のみならず,カテーテルを介しての急性出血や腫瘍の治療に応用されたり(経カテーテル塞栓療法),動脈の狭窄を特殊なバルーン状のカテーテルでひろげる治療(経皮カテーテル血管形成術)にも応用されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「血管撮影」の意味・わかりやすい解説

血管撮影
けっかんさつえい
angiography

血管造影ともいう。血管に造影剤を注入してX線撮影する検査法。動脈撮影は腫瘍,動脈瘤,血管の閉塞などの診断に有力で,普通は透視をしながら行う。部位により脳血管撮影,大動脈撮影,心血管撮影,腹腔動脈撮影,腎動脈撮影,四肢の動脈撮影などがある。カテーテルを用いて局所の動脈のみに造影剤を注入する選択的血管撮影が開発されて以来,診断率が向上した。一般に連続撮影装置が用いられ,動脈相,毛細管相,静脈相のX線写真から診断する。その診断的役割は大きい。静脈に造影剤を注入する検査は静脈撮影という。

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