衛所制(読み)えいしょせい(英語表記)Wèi suǒ zhì

改訂新版 世界大百科事典 「衛所制」の意味・わかりやすい解説

衛所制 (えいしょせい)
Wèi suǒ zhì

中国,明代の兵制。明の兵制は元制にならい,民と軍を峻別して軍戸設け,その籍を兵部に所属させ,衛所制に編成した。1衛は5守禦千戸所よりなり,千戸所の長が千戸である。1千戸所は10守禦百戸所よりなり,その長は百戸で,その下に総旗2名,小旗10名があり,1百戸は112名(総旗は5小旗,小旗は兵士10名)を率いた。したがって1衛の兵数は5600人を基本とし,都指揮使司(都司)に統率され,都司はさらに中央の五軍都督府に統率された。そして千戸所,百戸所は1府州の兵を統轄し,衛は数府州の兵を統轄する場合に置かれた。この衛所は首都京師の防衛にあたる京衛と地方府州の要衝に置かれた外衛に分かれ,とくに中都(安徽省鳳陽),山東河南,大寧などの衛所兵は毎年,輪番で京師におもむいた(班軍番上)。衛所数は1393年(洪武26)には都司17,内外衛329であったが,明代を通じて増減があり,また中期以降,高官による兵士の使役などにより兵士の逃亡などがはげしく,衛所制はいちじるしく弛緩し,軍隊の私兵化が進行した。
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旺文社世界史事典 三訂版 「衛所制」の解説

衛所制
えいしょせい

明の兵制
明では戸籍を軍戸と民戸に分け,軍戸は分屯して軍務に服した。正丁112人で百戸所,10百戸所で千戸所,5千戸所(5600人)を1衛とし,衛は各省の都指揮使に属した。全国に17都指揮使を置き,中央の五軍都督府の管轄下にあった。明の初めには329衛,のち493衛まで増加したが,明後半から軍屯崩壊などで崩れて世襲軍官の家兵・私兵に代わり,明末期には無力化して募兵・郷兵制が展開した。

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