軍戸(読み)ぐんこ

精選版 日本国語大辞典 「軍戸」の意味・読み・例文・類語

ぐん‐こ【軍戸】

  1. 〘 名詞 〙 中国南北朝時代から、王朝庶民職業世襲させて戸籍を編成したとき、軍籍に属した将兵およびその家族をいう。明・清の戸籍は軍・民・匠などの区別を立て、軍戸は民戸より蔑視された。〔宋書‐武帝紀〕

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「軍戸」の解説

軍戸(ぐんこ)

元,明,清代の戸籍上の区分の一つ。軍籍ともいう。戸ごとに正軍(兵士)一人の軍役を負担し,世襲を義務づけられた。元代には,民戸,軍戸,匠戸(しょうこ)など,国家に対する徭役(ようえき)負担の種類にもとづいた戸籍上の区分が行われた。明代もこれを受け継いだ。当初はその社会的地位も高かったが,軍役負担の重さから忌避され,地位が低下した。しかし,民戸と同様に科挙の受験資格を有するなど,身分上の差異はなかった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軍戸」の意味・わかりやすい解説

軍戸
ぐんこ
jun-hu; chün-hu

中国の戸籍上,軍籍に指定されて兵士を出す家をいう。軍戸は元朝では一般民戸と区別して万戸府に隷属していたが,明朝はこれにならい,戸籍を民戸のほかに軍戸,匠戸竈戸 (そうこ) などに分け,軍戸は兵部に隷属して衛所兵役の義務を負った。毎戸1人を正丁として兵士に出し,他を余丁として正丁に事故があった場合に補充するもので,一般の徭役は免除されたが,世襲的な軍役を課せられた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「軍戸」の解説

軍戸
ぐんこ

元・明代に一般民戸と区別され,兵役を負担した戸
元朝においてモンゴル族軍団のほかに世襲的漢人軍団が編成されたが,明も元制にならい,庶民の戸籍を民戸(黄冊・戸部の管轄),軍戸(軍冊・兵部の管轄)に分け,後者を地域の衛所に属して屯田させ,各戸から兵1名を出させた。

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普及版 字通 「軍戸」の読み・字形・画数・意味

【軍戸】ぐんこ

軍籍の戸口。

字通「軍」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の軍戸の言及

【衛所制】より

…中国,明代の兵制。明の兵制は元制にならい,民と軍を峻別して軍戸を設け,その籍を兵部に所属させ,衛所制に編成した。1衛は5守禦千戸所よりなり,千戸所の長が千戸である。…

【元】より

… 蒙古,色目,漢人,南人の区分は特権に基づく身分規定であるが,これと平行して徭役義務のうえからも法制化された諸色戸計の身分規定は特権をもたない漢人・南人の一般庶民を対象とするものだけに内容も複雑である。諸色戸計とは一般民戸を狭義の民戸,站戸,軍戸,匠戸などに区分し,それぞれに特定の徭役を世襲せしめる(民戸には一般郷役,站戸には駅伝維持の諸負担,匠戸には各種の造作,軍戸には軍役を賦課する)ものであるから,まさしく身分規定とみなしてさしつかえがない。なかでも軍戸は元朝兵制を支える重要基盤であるにもかかわらず,江南には施行されないでひとり漢人戸のみをもって編成されたから,徭役の偏重による軍戸の疲弊をきたしてそれが各種の社会問題の原因となった。…

【賦役】より

…すなわち,戸籍を4種に分けた。兵役を負担する軍戸,技術労働を負担する匠戸,製塩労働に従事する竈戸(そうこ),および一般の民戸である。民戸の負担する徭役は,里甲組織を単位として賦課され,里長,甲首などは正役と呼ばれて10年に1回,1年間服役して徴税などの仕事に当たる(里甲制)。…

【兵戸】より

…中国,魏晋南北朝に行われた世襲的兵士。軍戸,兵家,士家ともいう。後漢ころから一般郡県民による徴兵制がすたれ,兵民分離の傾向がみられるが,魏・晋以後の諸政権は,流民や降伏民などを兵籍につけ,軍事労働を世襲させた。…

【明】より


[里甲制と税制]
 民政関係について述べるならば,まず人民は戸籍上,軍,民,匠,竈(そう)の4種に分けられているが,これは負担する徭役(ようえき)の違いによる分類である。すなわち,軍戸は兵役,民戸は一般行改の運営上必要な労働,匠戸は技術労働,竈戸は製塩労働を負担する者であった。数の上からいえば,民戸が圧倒的多数を占めていたので,以下は民戸を中心として解説する。…

※「軍戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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