元,明,清代の戸籍上の区分の一つ。軍籍ともいう。戸ごとに正軍(兵士)一人の軍役を負担し,世襲を義務づけられた。元代には,民戸,軍戸,匠戸(しょうこ)など,国家に対する徭役(ようえき)負担の種類にもとづいた戸籍上の区分が行われた。明代もこれを受け継いだ。当初はその社会的地位も高かったが,軍役負担の重さから忌避され,地位が低下した。しかし,民戸と同様に科挙の受験資格を有するなど,身分上の差異はなかった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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…中国,明代の兵制。明の兵制は元制にならい,民と軍を峻別して軍戸を設け,その籍を兵部に所属させ,衛所制に編成した。1衛は5守禦千戸所よりなり,千戸所の長が千戸である。…
… 蒙古,色目,漢人,南人の区分は特権に基づく身分規定であるが,これと平行して徭役義務のうえからも法制化された諸色戸計の身分規定は特権をもたない漢人・南人の一般庶民を対象とするものだけに内容も複雑である。諸色戸計とは一般民戸を狭義の民戸,站戸,軍戸,匠戸などに区分し,それぞれに特定の徭役を世襲せしめる(民戸には一般郷役,站戸には駅伝維持の諸負担,匠戸には各種の造作,軍戸には軍役を賦課する)ものであるから,まさしく身分規定とみなしてさしつかえがない。なかでも軍戸は元朝兵制を支える重要基盤であるにもかかわらず,江南には施行されないでひとり漢人戸のみをもって編成されたから,徭役の偏重による軍戸の疲弊をきたしてそれが各種の社会問題の原因となった。…
…すなわち,戸籍を4種に分けた。兵役を負担する軍戸,技術労働を負担する匠戸,製塩労働に従事する竈戸(そうこ),および一般の民戸である。民戸の負担する徭役は,里甲組織を単位として賦課され,里長,甲首などは正役と呼ばれて10年に1回,1年間服役して徴税などの仕事に当たる(里甲制)。…
…中国,魏晋南北朝に行われた世襲的兵士。軍戸,兵家,士家ともいう。後漢ころから一般郡県民による徴兵制がすたれ,兵民分離の傾向がみられるが,魏・晋以後の諸政権は,流民や降伏民などを兵籍につけ,軍事労働を世襲させた。…
…
[里甲制と税制]
民政関係について述べるならば,まず人民は戸籍上,軍,民,匠,竈(そう)の4種に分けられているが,これは負担する徭役(ようえき)の違いによる分類である。すなわち,軍戸は兵役,民戸は一般行改の運営上必要な労働,匠戸は技術労働,竈戸は製塩労働を負担する者であった。数の上からいえば,民戸が圧倒的多数を占めていたので,以下は民戸を中心として解説する。…
※「軍戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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