襲・圧(読み)おそう

精選版 日本国語大辞典 「襲・圧」の意味・読み・例文・類語

おそ・う おそふ【襲・圧】

〘他ワ五(ハ四)〙 (動詞「おす(押)」の未然形反復・継続を表わす接尾語「ふ」が付いて音が変化した語)
① (圧) 上から押しつける。圧する。
書紀(720)神武即位前(熱田本訓)「自(をのれ)(おし)を蹈て圧(ヲソハ)れ死ぬ」
② 不意に敵に攻めかけたり、人に危害を加えたりする。襲撃する。また、突然に人の家におしかける。比喩的に、風雨、地震などが身に及ぶことにもいう。
※書紀(720)皇極二年一一月(岩崎本訓)「蘇我臣入鹿〈略〉山背大兄王を掩(オソ)はしむ」
俊寛(1921)〈菊池寛〉「北山時雨が、折々襲って来る時であるが」
③ (受身の表現を伴うことが多い) 物怪(もののけ)悪霊がなどが乗り移る。→襲われる
※竹取(9C末‐10C初)「内外(うちと)なる人の心ども、物におそはるるやうにて」
④ 衣を重ねて着る。上から布などでおおう。よそう。
※大日経治安二年点(1022)「髪冠して純帛を襲(オソフ)
官職や家督などを受け継ぐ。世襲する。襲名する。〔観智院本名義抄(1241)〕
渋江抽斎(1916)〈森鴎外〉一五「門下俊才が入って後(のち)を襲(オソ)った」 〔春秋左伝‐昭公二八年〕
⑥ 習慣や制度などを踏襲する。習いうけつぐ。
※日本の下層社会(1899)〈横山源之助〉五「旧習を襲うて小作米は以前のままにすと雖も」
⑦ (受身の表現を伴うことが多い) 病魔、恐怖の念、悪夢、さびしさなどが心身をさいなむ。
※病院の窓(1908)〈石川啄木〉「ぴくりぴくりと痙攣が時々顔を襲うて」
[補注]漢文訓読に特有の語であり、和文系資料の用例は少ない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報