改訂新版 世界大百科事典 「親会社子会社」の意味・わかりやすい解説
親会社・子会社 (おやがいしゃこがいしゃ)
会社間に支配従属関係があるとき,支配する側の会社を親会社(支配会社),支配される会社を子会社(従属会社)という。会社の親子関係は本来,親会社の株式所有比率,子会社の株式分散度および両会社の規模,取引関係,役員兼任関係等により総合的・実質的に判断されるべきものだが,商法は,運用の便宜のために,発行済株式総数の過半数株式所有(有限会社の場合は資本の過半数出資口数所有)という形式的な基準によって親子会社を定義する(商法211条ノ2-1項)。親子関係は,取引関係・業務提携を緊密・安定化したり,競争を排除したりするために株式を取得して形成されるが(企業集中),会社が営業の一部門を分離独立させて子会社を設立することによっても生ずる(企業分割)。子会社は親会社の株式を原則として取得しえず,例外的に取得してもその議決権を行使しえない(241条3項)。
親子会社は,事実上,一つの経済単位を構成し,個々の企業の計算書類によってはその財務状況が十分にはわからないため親会社の株主や債権者等の保護に欠ける。そこで証券取引法では連結財務諸表制度を設けており,商法でも,連結計算書類制度の導入が検討されている。また,親会社の支配力濫用を規制するための立法的努力がなされつつある。独禁法上も,親子会社を単一の〈事業者〉とみるべきかどうか議論されているが,その際は,商法とは別に,その規制目的に応じた親子会社概念を定立すべきである。
→一人(いちにん)会社 →企業結合 →企業分割
執筆者:森本 滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報