水や湯を入れて、手や顔を洗うための容器。また、歯ぐろめや口をすすぐのにも用いる。つくりは金属、陶器、木地漆塗りのもので、家紋を入れていたり、蒔絵(まきえ)で装飾されたものがある。形状は、円形の胴部左右に2本ずつ、4本の手があたかも角(つの)が生えているように出ているので、この名が生まれた。袖(そで)をかけて手を洗うに都合がよいためという説と、2人して持ち運ぶのに便利であるという説とがある。盥に水を注ぐ際、水が散らぬように、糸で編んだ貫簀(ぬきす)を敷く。これに付属して、楾(はんぞう/はぞう)(半挿・匜)が水・湯を入れ注ぐ器としてあり、また水瓶(すいびょう)がかわりに用いられる場合もある。そして、楾を盥の中に入れて持ち運ぶ。平安時代に用いられていたことは、『枕草子(まくらのそうし)』に「楾に手水などいれて、たらゐの手もなきなどあり」とあって、手のついた盥の角盥のほうが多く用いられていたようである。
[郷家忠臣]
…〈たらい〉は〈手洗い〉がなまった言葉で,古くからさまざまに使用されてきたが,現在ではもっぱら洗濯や水浴用の大型のものをいい,洗顔用は洗面器とよんでいる。中世までは主として角盥(つのだらい)が使われていた。これは木製黒漆塗りの円形で,左右に2本ずつ角のような長い柄がついている。…
※「角盥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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