言捨てる(読み)イイステル

デジタル大辞泉 「言捨てる」の意味・読み・例文・類語

いい‐す・てる〔いひ‐〕【言(い)捨てる】

[動タ下一][文]いひす・つ[タ下二]
言いたいことをその場限りに言う。言いっぱなしにする。「苦情を―・ててその店を出る」
ふと口にする。無造作に言う。
「昔の人は、ただいかに―・てたることくさも、皆いみじく聞こゆるにや」〈徒然・一四〉
連歌俳諧で、その場限りで句を詠み捨てて、記録しないでおく。
「―・てられし句どもをあつめ」〈貝おほひ・序〉
[類語]言い残す言い伝える言い置く捨て台詞

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「言捨てる」の意味・読み・例文・類語

いい‐す・てるいひ‥【言捨】

  1. 〘 他動詞 タ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]いひす・つ 〘 他動詞 タ行下二段活用 〙
  2. 言ったままで反応を待たない。言い放つ。
    1. [初出の実例]「翁〈略〉まかり入りぬと、いひすてて入り給ひぬ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)藤裏葉)
  3. 何の気なしに言う。不用意に言う。
    1. [初出の実例]「いひすてて後のゆくへを思ひ出でばさて然(さ)は如何に浦島の筥(はこ)」(出典山家集(12C後)上)
  4. 謡曲で、文句のある部分を捨てて発音しない。
    1. [初出の実例]「又、すて声とて、云をさめ、又句うつりなどの文字を云すてて、後句へうつる事あり」(出典:曲附次第(1423頃))
  5. 連歌、俳諧で、その場限りで記録しないで詠む。また、中世、連歌が正式に記録されるのに対して、俳諧は座興のものとして詠み捨てられたところから、俳諧を詠むことを表わす。→言い捨て
    1. [初出の実例]「連哥などいひすてて、夜もすがら遊ぶ」(出典:都路のわかれ(1275))

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