浦島(読み)うらしま

精選版 日本国語大辞典 「浦島」の意味・読み・例文・類語

うら‐しま【浦島】

[1] 〘名〙 トウカムリガイ科の巻き貝。房総半島以南の水深二〇~一〇〇メートルの砂泥底にすむ。螺塔(らとう)が低く、卵形。殻高約八センチメートル。表面は黄白色で、褐色の方形斑が並ぶ。殻口は大きく、内側に小さなひだが並ぶ。和名ウラシマガイ。
[2]
[二] 浦島伝説に取材した作品。
① 謡曲。脇能物。廃曲。作者不詳。別名「水江(みずのえ)」。臣下が丹後国水江に下向し、浦島明神から薬を授けられる。
② 謡曲。脇能物。廃曲。宝生作。別名「龍神浦島」。亀山院の臣下が水江に下向すると、蓬莱の仙女、浦島明神、海龍王、天女などが現われる。
③ 狂言。大蔵流番外曲。祖父と孫が釣った亀を助けてやると、亀の精が現われ、磯辺に箱を置いて消える。二人が箱をあけると、白い煙が立ち、祖父は若い男となる。
歌舞伎所作事。長唄。四世杵屋三郎助作曲。文政一一年(一八二八江戸中村座で初演。七変化舞踊拙筆力七以呂波(にじりがきななついろは)」の一つ。
[三] 京都府北部、奥丹後半島東端の伊根町付近の古称。水江浦島子(みずのえのうらしまのこ)(=浦島太郎)をまつる宇良神社があるために呼ばれた。

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デジタル大辞泉 「浦島」の意味・読み・例文・類語

うらしま【浦島】

浦島太郎のこと。
謡曲脇能物宝生流番外曲。勅使が丹後水の江の浦島明神にもうでると、明神・竜神が現れ、不死の薬を与える。
狂言大蔵和泉いずみ番外曲。釣った亀を祖父と孫が助けると、亀の精が現れ、箱を置いていく。箱を開くと祖父は若い男になる。
歌舞伎舞踊長唄。2世瀬川如皐せがわじょこう作詩、4世杵屋三郎助きねやさぶろうすけ作曲。七変化拙筆力七以呂波にじりがきななついろは」の一つとして、文政11年(1828)江戸中村座中村芝翫なかむらしかんが初演。
洋画家、山本芳翠の絵画。油彩。明治26年(1893)から明治28年(1895)頃の作品で、西洋画のタッチと日本の昔話のモチーフを組み合わせた作風になっている。浦島図

うらしま[深海巡航探査機]

日本の海洋研究開発機構が所有する自律型の深海巡航探査機。平成10年(1998)より開発開始。母船とケーブルで接続されず、搭載した蓄電池または燃料電池動力源とする。慣性航法および音響による位置検出を行い、障害物を回避したり、各種データを取得したりできる。最大使用深度は3500メートル。平成17年(2005)、巡航探査機としては世界最長の317キロメートルに及ぶ全自動長距離航行に成功した。

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日本歴史地名大系 「浦島」の解説

浦島
うらしま

歌学書「和歌初学抄」「八雲御抄」「和歌色葉」にみえ、「浦島の子が住所」との注がある。「古今六帖」に次の歌が載る。

<資料は省略されています>

鴨長明「無名抄」に次のようにある。

<資料は省略されています>

これにより、「あさもがはの明神」はかつてあった浅茂川湖東辺の浦島伝説を伝える網野神社と考えられ、歌学書のいう「浦島」はその付近といえる。

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改訂新版 世界大百科事典 「浦島」の意味・わかりやすい解説

浦島 (うらしま)

(1)能の曲名。脇能物。神物。非現行演目。作者不明。宮増(みやます)作ともいう。前ジテは蓬萊の仙女の化身。後ジテは浦島明神の神霊。浦島明神参拝の勅命を受けた廷臣(ワキ)が,丹後の水江(みずのえ)に赴く。釣り舟を操る若い女に言葉をかけると,舟で明神に案内してくれる。女は,〈明けて悔しい玉手箱,明けてうれしい天の岩戸〉などという話をして(〈クセ〉),自分は実は蓬萊の仙女だと告げて消え去る。夜に入ると仙女が本来の姿を見せて,舞を舞い(〈天女ノ舞〉),竜神が蓬萊山を指し示し,明神もいかめしい老体の神姿を現して玉手箱を勅使に見せ,不死の薬を与えなどする(〈ノリ地〉)。聞き所はクセ。後場は変化の多いにぎやかな場面。
執筆者:(2)歌舞伎舞踊。長唄。1828年(文政11)3月江戸中村座初演。中村芝翫(しかん)(4世歌右衛門)が踊った七変化舞踊《拙筆力七以呂波(にじりがきななついろは)》の一曲。浦島伝説に取材し,富本の《乙姫(おとひめ)》から引き抜いて《浦島》になる。作詞2世瀬川如皐(じよこう),作曲10世杵屋(きねや)六左衛門,振付4世西川扇蔵,藤間大助,市山七十郎。上方唄《浦島》を修訂した曲で,約15分の短い曲であるが,旋律も美しく格調の高い佳作。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浦島」の意味・わかりやすい解説

浦島
うらしま

歌舞伎(かぶき)舞踊。長唄(ながうた)。2世瀬川如皐(じょこう)作詞。10世杵屋(きねや)六左衛門(当時杵屋三郎助)作曲。1828年(文政11)3月江戸中村座で4世中村歌右衛門(うたえもん)(当時芝翫(しかん))が初演した『拙筆力七以呂波(にじりがきななついろは)』という七変化舞踊の一つ。浦島太郎の伝説に取材したもので、竜宮から帰った浦島が玉手箱をあけて老人になるまでを描く。大海原の気分と幻想的な感じがよく出た曲で、振としては乙姫(おとひめ)を思い起こすところが眼目。なお、坪内逍遙(しょうよう)作の『新曲(しんきょく)浦島』に対し、これを「旧(きゅう)浦島」または「旧浦」と俗称する。

[松井俊諭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浦島」の意味・わかりやすい解説

浦島
うらしま

歌舞伎舞踊曲。長唄。本名題『拙筆力七以呂波 (にじりがきななついろは) 』。七変化の一つ。文政 11 (1828) 年江戸中村座,2世中村芝翫 (4世中村歌右衛門) 初演。作曲杵屋正六 (添削4世杵屋三郎助) ,振付4世西川扇蔵ほか。浦島太郎が乙姫との思い出を胸にいだきつつ踊り狂い,のちに玉手箱を開け白髪の老人となって舞う。狂乱物風の二枚扇の振りがすぐれる。船唄の美しい旋律で,三下りから二上りと転調。同じ浦島伝説を扱ったものに,のちの『新曲浦島』がある。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「浦島」の解説

浦島
〔長唄〕
うらしま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
瀬川如皐(2代)
演者
杵屋三郎助(4代)
初演
文政11.3(江戸・中村座)

浦島
(通称)
うらしま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
一富清和年代記 など
初演
延享3.5(江戸・市村座)

浦島
うらしま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
寛延2.1(京・嵐三右衛門座)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「浦島」の解説

浦島 (ウラシマ)

動物。貝

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