日本大百科全書(ニッポニカ) 「訪問教育」の意味・わかりやすい解説
訪問教育
ほうもんきょういく
心身の障害が重度または重複(ちょうふく)しているため、特別支援学校などへ通学して教育を受けることが困難な児童・生徒に対して、教員が児童・生徒の居住している家庭・病院・施設等へ訪問して教育することをいう。1969年(昭和44)に千葉、神奈川の両県で開始されたのが最初とされている。その後1974年には全都道府県実施へと発展し、訪問指導員の経費補助を文部省(現文部科学省)は開始した。
対象の児童・生徒は通学できないために就学猶予・免除の措置を受けている者であったが、徐々に学籍を付与するなどの改善が図られた。指導担当者も当初は退職教員などを非常勤職員として充当していたが、1979年度(昭和54)の養護学校(現特別支援学校)教育の義務制実施を機に、国がこの訪問教育を初めて教育制度に位置づけたことにより、養護学校などの正規の教員がその教育を担当することとなった。訪問教育の教育課程は学校教育法施行規則第131条に「教員を派遣して教育を行う場合……特別の教育課程によることができる」とし、学習指導要領でも「重複障害者の特例」を適用させている。指導時間は週2回4時間程度で行うのが一般的である。指導内容は本人の状態により異なるが、自立活動(かつては養護・訓練とよばれた)を主とした指導が行われる。日常生活技能、移動、コミュニケーション、集団参加などが取り上げられる。対象児は医療や生活上の規制を必要とする重度重複障害児が多いため、とくに個別化された教育計画の作成が必要である。
[瀬尾政雄]