自立活動(読み)じりつかつどう

日本大百科全書(ニッポニカ)「自立活動」の解説

自立活動
じりつかつどう

特別支援学校で行われる教育課程の一つ。特別支援学校(かつての盲・聾(ろう)・養護学校を含む特殊教育諸学校)における教育の目的は、幼稚園や小・中・高等学校に準ずる教育を行うとともに、各自の障害に基づく種々の困難を改善・克服するために必要な知識技能を授けることである。この目的を実現するために、学習指導要領には特別支援学校の教育目標として「児童及び生徒の障害に基づく種々の困難を改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うこと」と明記されている。また、学習指導要領中の「教育課程の編成」には、この指導を行うための特別の領域が設定されている。これが「自立活動(かつては養護・訓練とよばれていた)」である。この特別の指導領域が初めて登場したのは1971年(昭和46)でその名称は「養護・訓練」であった。しかし、1999年(平成11)の学習指導要領の改訂により、名称が「自立活動」に改められ、幼稚部は2000年、小・中学部は2002年、高等部は2003年より実施されている。

 それまでの「養護・訓練」では、その目標を「児童又は生徒の心身の障害の状態を改善し、又は克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基礎を培う」としていたが、「自立活動」では「個々の児童又は生徒が自立を目指し、障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う」とされ、自立に向けた主体的な取り組みの教育活動が強調されている。

[瀬尾政雄・鈴木 篤]

「養護・訓練」から「自立活動」へ――何が変わったか

「養護・訓練」の内容

1999年(平成11)に改訂される前の学習指導要領の「養護・訓練」と改訂された学習指導要領の「自立活動」の内容は、いずれも5分野からなる。改訂前の「養護・訓練」の内容は以下のとおりであった。

〔1〕身体の健康
(1)生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。

(2)疾病の状態の理解と生活管理に関すること。

(3)損傷の理解と養護に関すること。

〔2〕心理的適応
(1)対人関係の形成に関すること。

(2)心身の障害や環境に基づく心理的不適応の改善に関すること。

(3)障害を克服する意欲の向上に関すること。

〔3〕環境の認知
(1)感覚の活用に関すること。

(2)感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。

(3)認知の枠組となる概念の形成に関すること。

〔4〕運動・動作
(1)姿勢と運動・動作の基本の習得及び改善に関すること。

(2)姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。

(3)日常生活の基本動作の習得及び改善に関すること。

(4)移動能力の向上に関すること。

(5)作業の巧緻(こうち)性及び遂行能力の向上に関すること。

〔5〕意思の伝達
(1)意思の相互伝達の基礎的能力の習得に関すること。

(2)言語の受容・表出能力の向上に関すること。

(3)言語の形成能力の向上に関すること。

(4)意思の相互伝達の補助的手段の活用に関すること。

 1971年(昭和46)当初の「養護・訓練」の内容の柱は、「心身の適応」「感覚機能の向上」「運動機能の向上」「意思の伝達」の4分野であったが、1989年(平成1)の学習指導要領の告示に基づいて「身体の健康」「心理的適応」「環境の認知」「運動・動作」「意思の伝達」からなる5分野に改められた。また、このときに初めて特殊教育諸学校(盲・聾・養護学校)の幼稚部教育要領が制定され、幼稚部の教育課程に「養護・訓練」が位置づけられたが、その内容は小・中・高等部との一貫性を欠いていた。しかし、1999年の改訂により、その点が考慮され、内容の一本化が図られている。

[瀬尾政雄・鈴木 篤]

「自立活動」の内容

1999年(平成11)の改訂による学習指導要領における「自立活動」の内容は以下のとおりである。

〔1〕健康の保持
(1)生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。

(2)病気の状態の理解と生活管理に関すること。

(3)損傷の状態の理解と養護に関すること。

(4)健康状態の維持・改善に関すること。

〔2〕心理的な安定
(1)情緒の安定に関すること。

(2)対人関係の形成の基礎に関すること。

(3)状況の変化への適切な対応に関すること。

(4)障害に基づく種々の困難を改善・克服する意欲の向上に関すること。

〔3〕環境の把握
(1)保有する感覚の活用に関すること。

(2)感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。

(3)感覚を総合的に活用した周囲の状況の把握に関すること。

(4)認知や行動の手掛りとなる概念の形成に関すること。

〔4〕身体の動き
(1)姿勢と運動・動作の基本的技能に関すること。

(2)姿勢保持と運動・動作の補助的手段の活用に関すること。

(3)日常生活に必要な基本動作に関すること。

(4)身体の移動能力に関すること。

(5)作業の円滑な遂行に関すること。

〔5〕コミュニケーション
(1)コミュニケーションの基礎的能力に関すること。

(2)言語の受容と表出に関すること。

(3)言語の形成と活用に関すること。

(4)コミュニケーション手段の選択と活用に関すること。

(5)状況に応じたコミュニケーションに関すること。

 教科指導においては、発達段階を踏まえた学年別の系統的な指導を行うことを原則とするのに対して、「自立活動」における指導は、「健康の保持」「心理的な安定」「環境の把握」「身体の動き」「コミュニケーション」の5分野からなる「自立活動の内容」に基づき、個々の児童・生徒の必要性に応じた指導が選択的かつ段階的に行われる。児童・生徒の障害の種類や程度は、個別に異なっているのが常態である。学年や小・中学部などの各部によって「自立活動」の指導内容は固定したものではなく、個別の障害の状態によって指導の方法は異なる。「自立活動」の指導にあたっては、「指導の目標及び指導内容を明確にし、個別の指導計画を作成するものとする」(学習指導要領)として、学校および教師に個別の指導計画の作成を義務づけている。とくに重度重複障害児については、この「自立活動」を主とした指導が中心となることが多い。

 「自立活動」の指導の重要性や専門性の確保の観点から、教員定数も義務教育段階に4~6人の教員が各学校に配置できるようになっている。高度な専門性を有する教員の配置や養成については、かならずしも十分な体制は確保されていないが、「専門的な知識や技能を有する教師を中心として、全教師の協力の下に効果的に行われるようにする」(学習指導要領)という取り組みがたいせつである。

[瀬尾政雄・鈴木 篤]

『香川邦生・藤田和弘編『自立活動の指導――新しい障害児教育への取り組み』(2000・教育出版)』『安藤隆男編著『自立活動における個別の指導計画の理念と実践――あすの授業を創造する試み』(2001・川島書店)』『中尾繁樹編著『みんなの「自立活動」特別支援学校編』(2009・明治図書出版書)』

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