改訂新版 世界大百科事典 「証券印刷」の意味・わかりやすい解説
証券印刷 (しょうけんいんさつ)
security printing
紙幣や郵便切手あるいは小切手のような値打ちのある印刷物,またその印刷法をいう。印刷物に有価証券として流通する価値を与えるので,偽造,改ざんが困難なこと,またこれらの不正が行われた場合に,容易に発見できることを主眼としている。紙幣は額面が一定であるために複製偽造が行われやすいので,精密な印刷がなされ,高額になるほど工程を複雑にして複製を困難にする考慮がはらわれる。その一つの例として細かい地紋を模様にとり入れるが,これは再現の困難な万線(まんせん)(細い直線の集合)模様を特殊の彫刻機械で作り,主要なデザインに有名人の肖像や建築物を手彫りし多色の凹版印刷をするなど,高度の技術を用いる。用紙も特別に抄造され,使用目的を限定するために透しを入れ,また長期の流通に耐える強度も与える。宝くじなどでは番号を改ざんされる危険があるので,ある条件に対して敏感に反応する特殊な性質を与えることも考えられている。使用インキも一般インキとは異なり,蛍光性,発色性など特殊のものが研究されている。
証券印刷としては,紙幣の類として株券,公社債券,受益証券類,商品券などがあり,宝くじの類として抽選券,小切手,約束手形などがある。また入場券,乗車船券,郵便切手,シールなども証券印刷の分野に含められ,その目的によっては美術的要素を重視する場合もある。多くの場合番号印刷を行い,印刷途上はもちろん,製品としての検査管理には万全を期する。
執筆者:山本 隆太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報