日本大百科全書(ニッポニカ) 「証券税制」の意味・わかりやすい解説
証券税制
しょうけんぜいせい
株式や投資信託などの保有や売買に関する税制をさす。株式相場の低迷や個人資産を貯蓄から投資へ誘導する政策目的もあって、上場株式や投資信託などを売ったときに得る利益(譲渡益)や配当・分配金への税率は10%(本来は20%)に軽減されている。ただ複雑でわかりにくいとの指摘もあり、2012年からは預貯金や債券などを含めた金融商品全般に対する税率を20%に統一する金融所得一体課税が導入される予定になっている。
日本の株式譲渡益課税は、売却額に一定率をかけて税額を決める源泉分離課税と、売却所得(益)を他の所得と分離して税額を計算する申告分離課税が併存していた。しかし両制度の併存・選択制は長く金持ち優遇だと批判されており、2003年(平成15)からの新証券税制で申告分離課税に一本化された。申告分離課税では原則として、投資家は確定申告をする必要がある。ただ申告に不慣れな投資家に配慮し、納税手続が簡単な特定口座制度も同時に始まった。特定口座には、利益が出れば証券会社が自動的に課税分を天引きし、損失が出たら税額分を自動還付してくれる「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類がある。源泉徴収ありの特定口座を選べば確定申告は不要になる。源泉徴収なしの特定口座でも、証券会社から届く年間取引報告書を税務署に提出するなど簡単な手続で申告できるようになった。
2009年からは、上場株式や投資信託の譲渡損と、配当金・分配金を合算して、利益が出た場合のみ課税される損益通算ができるようになった。2012年の金融所得一体課税の導入とあわせ、年間100万円までの少額株式投資(5年間にわたり総額500万円まで)を優遇する非課税口座も導入される予定である。
[編集部]