2種類以上の所得がある場合に、赤字と黒字を相殺して総所得税額を調整する仕組み。税法上、10種類に分類される個人の所得のうち、事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の4種類が赤字だった場合が対象となる。サラリーマンが事業や不動産経営などの副業で赤字を出すと、給与所得の黒字から差し引き、還付申告することで源泉徴収された税の一部が戻る。
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一定期間内の損失(赤字)と利益(黒字)を合算し、最終的に利益が出たか、損失が出たかを算出すること。日本では、損益通算は所得税法第69条に規定されており、10種類の所得(給与所得、利子所得、配当所得、事業所得、不動産所得、山林所得、譲渡所得、退職所得、一時所得、雑所得)のうち、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得に損失(赤字)が出た場合、所得額(黒字分)から損失額(赤字分)を差し引いて所得額を圧縮(減額)でき、納税額を低く抑えることが可能になる。損益通算の期間は1月から12月までの1年間。たとえば給与所得者が副業のマンション経営で赤字を出した際、この赤字分を給与所得から控除する場合などが損益通算に相当する。損益通算した結果、過払いであった場合は税務署に確定申告し、払いすぎた税金の還付を受けられる。赤字の場合には確定申告の必要はないが、確定申告により赤字分を翌年以降に繰り越して控除できるケースもある。事業所得、譲渡所得、不動産所得のうち、別荘、競走馬、1個30万円を超える動産(宝石など)といった、生活に通常必要でない資産については、売却損が出ても損益通算は認められない。バブル経済崩壊後、損益通算を認められていたゴルフ会員権の売却損についても、2014年(平成26)4月からは認められなくなった。対象範囲は税制改正でたびたび変更されており、利用にあたっては注意が必要である。
日本では2009年から、利子所得、配当所得、譲渡所得、雑所得などに別々に分類されている預貯金、国債、株式、投資信託、外国為替(かわせ)証拠金取引(FX)などの金融商品の売却損益や配当・分配金などを金融所得に一体化し、課税方法を統一して運用益と運用損の損益通算範囲を広げようという「金融所得の一体課税」が段階的に進み始めた。同年から株式の売却損(譲渡所得)と株式の配当(配当所得)の損益通算が認められ、2016年からは株式の売却損と、国債、地方債、外国債、社債、公社債、投資信託の売却益や利子と損益通算できるようになる。しかし預貯金利子やFXなどの金融派生商品(デリバティブ)などは対象外で、金融庁は損益通算の範囲を拡大する税制改正を要望している。またNISA(ニーサ)(少額投資非課税制度)を利用した口座で損失が出た場合、通常の課税口座との損益通算はできない。
なお法人税法では所得の分類がなく、法人所得は1種類であるため、損益通算の制限は設けられていない。
[矢野 武]
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