確定申告(読み)かくていしんこく

精選版 日本国語大辞典 「確定申告」の意味・読み・例文・類語

かくてい‐しんこく【確定申告】

〘名〙 所得税、法人税などの申告納税制度のもとで、納税義務者がその年度の総所得額、課税所得額、所得税額など所定の事項を税務署長に申告すること。

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デジタル大辞泉 「確定申告」の意味・読み・例文・類語

かくてい‐しんこく【確定申告】

所得税法人税などのように、一定期間内に累積した所得に対して課される租税について、納税義務者が課税期間の終了後、その期間中の課税標準および税額を税務署長に申告すること。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「確定申告」の意味・わかりやすい解説

確定申告
かくていしんこく

申告納税制度をとる租税(所得税、法人税など)において、課税標準および税額を確定するために納税義務者が行う申告。所得税や法人税のような、ある一定期間にわたって発生する課税標準に対する課税の場合には、納税義務はその期間の経過によって成立することになるが、具体的な納税義務は確定申告によって確定する。所得税の場合は、1月1日から12月31日までに得た総合所得を、次の年の2月16日から3月15日までに申告書に記入して税務署に提出する。源泉徴収予定納税によってすでに納付している税額は、この確定申告によって清算される。すなわち確定税額より既納税額が少なければ足りない分を納付し、既納税額が多ければその分の還付を受けるわけである。法人税の場合には、事業年度終了の日から2か月以内に、確定した決算に基づき課税標準である所得金額または欠損金額、法人税の額などを記載した確定申告書を税務署に提出し、税額を納付する。なお、事業年度が6か月を超える法人は、6か月を経過した日から2か月以内に中間申告をしなければならない。

[林 正寿]

e-Tax

インターネットを使ってオンラインで所得税や法人税などを申告・納税する国税電子申告・納税システム(通称e-Tax)が2004年(平成16)から稼働している。運用は国税庁。e-Taxには、マイナンバー(個人番号)カード方式とID・パスワード方式の2種類がある。マイナンバーカード方式はマイナンバーを利用し、パソコンやスマートフォンから24時間、税務署に出向くことなく申告できる。申告者本人だけでなく扶養家族などのマイナンバーが必要だが、マイナンバーの専用サイト「マイナポータル」と連携させれば、医療費、生命保険料、地震保険料、社会保険料、公的年金雑所得、住宅ローンふるさと納税(寄附金控除)、株式・投資信託(特定口座のみ)所得などの申告や控除に必要な電子データを一括取得し、申告書に自動入力して送信できる。書類での申告と異なり、控除証明書などを保管する必要もない。通常1か月かかる還付も3週間程度で処理される。ID・パスワード方式は、マイナンバーカードの普及が進まない時期に暫定方式として誕生したもので、税務署に一度出向き、本人確認書類を提示して利用者識別番号(ID)と暗証番号(パスワード)を受け取る必要がある。e-Tax利用率は2021年度で、所得税申告が59.2%、法人税申告が87.9%、相続税申告は23.4%。

[矢野 武 2023年5月18日]

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知恵蔵 「確定申告」の解説

確定申告

国の税金は、納税者が自ら税務署へ所得などの申告を行うことで納税額が確定し、この確定した税額を自分で納税する「申告納税制度」を採っている。個人や法人が納税すべき税額を確定するために行う申告手続きが確定申告であり、個人と法人によって、手続き内容などが異なる。確定申告が必要なのは、個人の収入に課せられる所得税、法人の所得に課せられる法人税、消費税、贈与税や相続税である。
まず、個人の場合は、その年の1月1日から12月31日までの期間のすべての所得を計算し、所得税を算出する。その際に、すでに税金が源泉徴収されている場合や前年度の納税額をもとにその年の税額を推定する予定納税などで税金を払いすぎている場合には、精算して還付を受ける場合もある。サラリーマンなど給与所得者は毎月の給料から所得税が天引きされているが、年末調整で精算し調整しているので、確定申告をする必要はない。ただ、年末調整では精算できない医療費や家の新築・増改築、災害や盗難の被害、会社の退職などがあれば給与所得者でも確定申告が必要になり、払いすぎた税金の還付を受けることができる。
所得税の確定申告が必要なケースは、
(1)給与の収入金額が2千万円以上の人
(2)不動産収入や配当、年金などの副収入が年間20万円以上ある人
(3)2つ以上の会社から給料をもらっている人
(4)退職所得がある人
(5)年の途中で退職して、年末調整が受けられない人
などである。
なお、個人事業主は、事業所得のうち、収入から経費を差し引いた所得が38万円以上の場合に確定申告をする必要がある。
また、給与所得者で、払いすぎた税金が戻ってくる還付申告ができるのは、災害や盗難などで被害を受けた場合の雑損控除、一家の医療費が年間10万円以上払った場合の医療費控除、住宅をローンで購入した場合の住宅ローン控除や耐震のためのリフォームなどをした場合の住宅耐震改修控除などがある。公的年金など雑所得だけの人は、社会保険料控除が受けられる。
個人の確定申告は、1月1日~12月31日までの所得を、翌年の2月16日~3月15日までに申告する。法人税は、確定申告の対象期間を事業年度とし、事業年度終了日の翌日から2カ以内に申告する。
また消費税は、個人の場合は1月1日~12月31日までの分を、翌年の3月31日までに、法人の場合は事業年度終了日から2カ月以内に申告する。贈与税は贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日まで、相続税は相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内が申告期限である。
確定申告は、税務署から連絡があるわけではないので、期限内に忘れずに申告しないといけない。

(金廻寿美子 ライター / 2009年)

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改訂新版 世界大百科事典 「確定申告」の意味・わかりやすい解説

確定申告 (かくていしんこく)

所得税または法人税などについて,課税標準または税額を確定する目的でなされる納税申告のこと。年度の中途においてなされる予定的申告(法人税の中間申告が典型例)に対置されることもあるが,予定的申告が先行しない場合にも,この用語が用いられる(清算確定申告,合併確定申告)。所得税の場合,予定納税源泉徴収による暫定的納付が,これにより精算される。

 所得税の確定申告には,確定所得申告と確定損失申告とがあり,前者は納税者の義務であるのに対して,後者は納税者の権利として規定されている。いずれも,翌年の3月15日が申告期限とされている(所得税法120条)。給与所得者でその年中に支払を受けるべき給与等の金額が一定金額以下の場合には,確定所得申告を要しないとされている(121条)。居住者が年の中途において死亡した場合には,その相続人が一定期間内に確定申告をしなければならず,居住者が年の中途において出国する場合には,その出国のときまでに確定申告をしなければならない。年末調整を受けた給与所得者は,医療費控除,雑損控除,寄付金控除等を受けるために,還付申告書を提出することができるが,これについては,期限の定めがない。

 法人税の確定申告は,各事業年度の終了の日の翌日から2月以内に,確定した決算に基づきなされなければならない(法人税法74条1項)。申告書には,貸借対照表,損益計算書等を添付することが義務づけられている(同条2項)。

 所得税,法人税ともに,記帳を奨励するために青色申告の制度が設けられている。
申告納税
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百科事典マイペディア 「確定申告」の意味・わかりやすい解説

確定申告【かくていしんこく】

申告納税制度をとっている租税(所得税,法人税,贈与税,法人事業税など)の期間税について,課税期間経過後,納税義務者がその期間の実績に基づいて所得と税額を計算し申告すること。これにより税額が確定される。個人所得税の場合,年間(1月1日〜12月31日)の所得税額の確定をするために,居住地管轄の税務署に提出する。提出期間は翌年の2月16日〜3月15日。通常,給与所得者は年末調整によって税額が確定しているため,その必要はないが,給与所得以外の所得が20万円を超える場合,または総所得金額が2000万円を超える場合は確定申告が必要となる。また,医療費控除,住宅ローン控除などの還付を受ける場合も確定申告が必要となる。法人税の場合は,各事業年度終了の日の翌日から2月以内に確定した決算に基づいて申告を行う。→予定納税
→関連項目青色申告源泉徴収所得税申告納税

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「確定申告」の意味・わかりやすい解説

確定申告
かくていしんこく

所得と所得にかかる税金を税務署に申告する手続き。勤労・事業・資産・年金などによって得た収入から控除や経費を差し引いた課税所得と,それにかかる所得税の金額を納税者がみずから算出し申告・納付する申告納税制度に基づく。手続きは 1月1日から 12月31日までの所得分について,翌年の 2月16日から 3月15日の期間に行なう。控除額をこえる所得がある個人事業主,俸給・給料・賃金・歳費・賞与などの給与所得が年間 2000万円をこえる者,2社以上の会社などから給与を受け取っている者,給与所得がある者で副業や年金,配当などの収入が 20万円をこえる者などは申告をしなくてはならない。申告しなかったり,申告期限を過ぎてから申告すると加算税や延滞税が課される。また,医療費控除を受ける者,住宅借入金等特別控除を初めて受ける者,退職したために年末調整を受けていない者などは還付申告ができる。

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投資信託の用語集 「確定申告」の解説

確定申告


1月1日~12月31日までの1年間について、自分で所得を計算して、翌年2月16日から3月15日までの間に、税務署に申告して所得税を納税する仕組みのこと。給与所得者(サラリーマン)の大部分は、源泉徴収が行われ「年末調整」により所得税が精算されるので確定申告をする必要はないが、株式や投資信託等(「上場株式等」という。)の売却により利益を得た場合は確定申告をしなければならない。つまり、投資家は年間を通じた損益通算を行わなければならないが、その手続きを簡単に済ませるサービスとして、証券会社等が代行してくれる「特定口座」という仕組みがある。
特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2種類があるが、「源泉徴収あり」を選択すれば、確定申告をしなくてもよい。「源泉徴収なし」の特定口座を選択した場合は、証券会社等が損益を計算した「年間取引報告書」を発行してくれるので、その報告書を利用して簡単に確定申告を済ませることができる。
なお、確定申告は医療費控除など、税金の還付を受けたい場合も必要となるが、この場合の申告は2月15日以前であっても手続きを行うことができる。

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知恵蔵mini 「確定申告」の解説

確定申告

1月1日から12月31日までの1年間で得た所得にかかる所得税や復興特別所得税などの税金の総額を計算し、過不足なく納税するために税務署に申告する手続きのこと。会社員は事業主が年末調整で税金の計算や手続きを行うが、給与収入が2000万円を超える場合や、配当所得や不動産所得などの副業所得が20万円を超える場合などには自分で申告しなければならない。自営業などの個人事業主や、400万円を超える公的年金を受け取った場合なども申告手続きが必要となる。また、医療費が10万円を超えたり、災害・盗難などの被害にあったりした場合などに申告をすると、控除を受けることができる。申告は、指定の用紙に必要事項を記入して源泉徴収票や控除を受けたい項目の証明書類などを用意したうえで管轄の税務署に出向くか、郵送で行う。また、国税に関するオンラインサービスのe-Tax(イータックス)に事前申請すると、インターネットを利用して自宅で行うことができる。2019年度からはスマートフォンでも申告できるようになった。

(2020-2-27)

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「確定申告」の解説

確定申告

納税者が前年1年間(1月1日から12月31日)の所得税を計算し、翌年2月16日から3月15日までの間に、税務署に確定申告書を提出して税金を納める手続きのこと。1年間に得た売上や収入から必要経費を差し引いて所得を計算。各種控除を差し引いた後に課税対象となる所得を求めて申告する。また、税額を申告するばかりではなく、源泉徴収された税金や、すでに予定納税で納めた税金の総額で払いすぎの金額を戻してもらう目的もある。なお、税金の還付は、確定申告の期間でなくても、1月1日以降であれば手続きをとることが可能。

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会計用語キーワード辞典 「確定申告」の解説

確定申告

確定申告とは、納税義務者が納めるべき税額を計算して、税務署に申告すること。

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