精選版 日本国語大辞典 「話し」の意味・読み・例文・類語
はなし【話・咄・噺】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「はなす(話)」の連用形の名詞化 )
- ① はなすこと。語ること。談話すること。会話。おしゃべり。
- [初出の実例]「はなしをする事すき也。一座のとりもちも、おくれぬ人なり」(出典:評判記・野郎虫(1660)田中左門)
- 「それだけ賑に十時頃まで雑談(ハナシ)をして」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前)
- ② 解決したり、まとめたりするために話し合うこと。話し合い。談合。相談。また、交渉。
- [初出の実例]「官人、ちょと説話(はなし)申したし」(出典:通俗古今奇観(1814)二)
- 「夫婦が和熟すれば寝物語に円滑(まる)く相談(ハナシ)が成効(でき)る事だ」(出典:くれの廿八日(1898)〈内田魯庵〉二)
- ③ ひとつづきの内容をもって人に聞かせること。
- ④ 語られる内容。物語のすじ。
- (イ) 話題。
- [初出の実例]「『してめづらしひはなしがおじゃらふ』『こそおじゃるよ』」(出典:虎明本狂言・北条(室町末‐近世初))
- (ロ) 談話の内容。ある人の語ったことがら。
- [初出の実例]「故人知因の役者の談話(ハナシ)を伝に加へ」(出典:歌舞妓年代記(1811‐15)凡例)
- (ハ) 説話。伝説。昔ばなし。また、童話。おとぎばなし。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- [初出の実例]「之に能く似たる話説(ハナシ)あり。往時愚なる蛙ありて」(出典:狐の裁判(1884)〈井上勤訳〉五)
- (ニ) 物語。小説。
- (ホ) つくりばなし。虚構のこと。
- [初出の実例]「三田公の一目惚なんか全く話だ」(出典:大阪の宿(1925‐26)〈水上滝太郎〉一五)
- (ヘ) うわさ。評判。人から聞いたことがら。
- [初出の実例]「何でも主人より立派になって居るといふ話しである」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)
- (ト) 事件。事情。わけ。
- [初出の実例]「今の顛末(ハナシ)と云ふのを聞して下さいな」(出典:義血侠血(1894)〈泉鏡花〉一〇)
- (イ) 話題。
- ⑤ 演劇で、上演脚本が決定すると、その稽古をはじめる前に、作者、演出者などが一座の者を集め、その脚本を読みきかせること。本読み。
- [初出の実例]「京右衛門、〈略〉かりにもはなしの場にて、あしきとは申されず」(出典:役者論語(1776)耳塵集)
- ⑥ ( 形式名詞のように用いて ) こと。ことがら。
- [初出の実例]「吾輩は眤っと穴の出口で待って居らねばならん随分気の長い話だ」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉五)
話しの補助注記
語源は「はなす(放)」から来ていると見る説もあるが確証はない。ただ、「咄」を「はなし」という意味で用いるのは日本で生じた、いわゆる国訓で、その際「口から出る」のが「はなし」であると考えたとすれば、「放し」が語源であるとする説も成り立つ。