普通の名詞を「実質名詞」とするのに対して、実質的な意味が希薄で、多くの場合、連体修飾成分を伴って用いられる名詞を「形式名詞」とよぶ。たとえば、「いやなことでもしなければならないときがある」「おいしいものを好きなひとと食べるのは最高だ」の「こと・とき・もの・ひと」などがそれである。ただし、「ことがことだから」「ひとはだれでもそうだ」などのように独立して使われることもあるから、実質名詞との間に明確な一線を引くことはむずかしい。形式名詞の名称を、「そのほうがいい」の「ほう」のように単独では使えない語に限ることも考えられるが、それだと所属語数がきわめて少なくなり、分類そのものが無意味になろう。
[山口佳紀]
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