雅楽の一種目。死者を悼み冥福を祈念する歌の意で,皇室の葬礼楽。御葬歌(みはぶりのうた)ともいう。和琴(わごん)1面を伴奏に数名が唱和し,歌の主唱者1名が笏拍子を打つ。舞はない。歌詞は《古事記》中巻,倭建(やまとたける)命の死を悼む4歌を第1,第2,第3,第4の歌とし,初めの2歌で供物等を霊前に捧げ,あとの2歌でそれを下ろす。1912年明治天皇の葬儀の際に宮内省楽部の芝祐夏によって復興された。それ以前に関しては《楽家録》(1690),《歌儛品目》(1822)にも記載なく詳細は不明である。なお,《古事記》による歌詞は,第1歌〈なづきの田の 稲幹(いながら)に 稲幹に 匍(は)ひもとほろふ 野老蔓(ところづら)〉。2歌〈浅小竹原(あさしのはら) 腰なづむ 空は行かず 足よ行くな〉。3歌〈海処(うみが)行けば 腰なづむ 大河原の 植ゑ草 海処は いさよふ〉。4歌〈浜つ千鳥(ちとり) 浜よ行かず 磯伝ふ〉である。
執筆者:田辺 史郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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