日本大百科全書(ニッポニカ) 「認知の訴え」の意味・わかりやすい解説
認知の訴え
にんちのうったえ
未婚の女性が産んだ子または夫ある女性が別の男性との間にもうけた子、すなわち嫡出でない子が、父に対して法律上の父子関係の確定を求める裁判手続をいう(民法787条)。認知の訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所へ認知調停を申し立てなければならない(家事事件手続法244・257条)。この認知調停において、相手方である父と子またはその法定代理人たる母との間で、相手方が父であることを合意したときは、家庭裁判所は、相手方が真実の父であるかどうかを確かめたうえで、当該合意に相当する審判を行う(同法277条)。この審判に対して異議の申立てがなければ、審判が確定し、確定判決と同一の効力を有する(同法281条)。これに対して、相手方である父が認知に応じないときは、家庭裁判所の調停は打ち切られ、また相手方がすでに死亡しているときは、家庭裁判所の調停は行われない。そのような場合には、地方裁判所へ認知請求訴訟を起こすことができる。認知請求訴訟では、原告(子)と被告(父と名ざされた者)との間に父子関係があるかどうかを多方面から調べたうえで、判決が下されることになる。父がすでに死亡しているときは、死後3年以内に限り、検察官を被告として認知請求することができる。これを死後認知という。ところが、父が「蒸発」しており、生前に認知を求めることもできない事情にあったという場合に、父の死亡を知ったときは、その死亡時からすでに3年を経過していたというような事態もおこりうる。そこで、このような場合には、父の死亡が客観的に明らかとなったときから3年以内であれば認知請求訴訟を起こせるものとしている(最高裁判所判決昭57・3・19、民集36巻3号432頁)。
[石川 稔・野澤正充 2016年5月19日]