代理される本人から任命されるわけではなく,直接にせよ間接にせよ法律の規定に基づいて任命される代理人。本人から代理権を与えられて代理人となる任意代理人に対する。未成年者の親権者(民法818条),後見人(838条1号),禁治産者の後見人(同条2号),不在者の財産管理人(25条),相続人のいることが明らかでない財産の管理人(952条)などがこれに属する。本人からとくに任命されるわけではないから,その責任で,代理事務の全部または一部を他の人(復代理人)にさせることができるが(106条),他方,本人が任命するわけではないから,本人の利益保護のため代理人となりうる者の資格を前もって法律上限定しておくことも少なくない。たとえば,代理人は無能力者でもよいのが原則だが(102条),後見人は能力者に限る(846条)など,その適例である。
なお,民事訴訟法でも法定代理制度は必要であり,この場合には当事者本人の名で,本人に代わって自己の意思に基づき訴訟行為をする者である。そして,何ぴとが代理人となるか等の諸事項は民法その他の法令により定められることになっている(民事訴訟法28条)。また,刑事訴訟法でも,責任能力に関する刑法の規定(刑法39~41条)の適用がない罪にあたる事件につき,被告人または被疑者が意思能力を有しない場合には,その法定代理人が所要の訴訟行為を行うことになっているので(刑事訴訟法28条),この制度は有益かつ必要である。
→訴訟代理人 →代理
執筆者:須永 醇
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法律の規定に基づいて代理権が与えられた代理人をいう。これに対して、売買契約や訴訟の委任など、本人からの授権(本人の意思)によって代理権が与えられた代理人は任意代理人という。法定代理人は、親権者(民法818条以下)、未成年後見人(同法839条以下)、不在者の財産管理人(同法25条以下)、相続財産管理人(同法918条・952条以下)などが民法で規定されている。訴えの提起や、訴訟での主張などの訴訟上の行為(訴訟行為)については、民事訴訟法第31条以下、刑事訴訟法第28条に規定されている。民事訴訟では、未成年者および成年被後見人は、原則として、法定代理人によらなければ訴訟行為をすることができない(民事訴訟法31条)。これに対して、離婚などの身分上の行為に関する人事訴訟では、未成年者は、意思能力を欠くとき、すなわち、その意味を理解する能力がない場合にのみ、法定代理人が訴訟行為を行う。刑事手続でも、捜査や公判のときに、意思能力がないときのみ、法定代理人が代理人となる。
[伊藤高義]
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