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誘惑理論 ゆうわくりろんtheory of seduction

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

誘惑理論
ゆうわくりろん
theory of seduction

精神分析で,主体 (一般に子供) が,受動的に他人 (大部分の場合大人) の側からの性的な口説きや駆け引きを受ける現実の場面,あるいは空想的場面のことを誘惑といい,フロイトは,このような誘惑 (性的場面) が外傷となって,神経症発症の重要な病因的機能を成すと考えた。当初フロイトは,精神神経症の患者の治療中に,患者が性的誘惑の体験,すなわち他人 (一般に大人) がイニシアチブを取った言葉や身振りによる単純な口説きから,程度の差こそあれ性的な特徴を持つ攻撃に至るまでのさまざまな誘惑の体験を思い出すことに注目し,それを幼児期における現実の場面に基づくと考えた。そしてこの現実の誘惑によって引き起こされる性的驚愕 (きょうがく) により性の抑圧を説明しようとした。しかし,やがてフロイトは,誘惑場面が往々にして空想による再構成の産物であることを発見し,初期の誘惑理論を放棄するが,このことが精神分析におけるターニング・ポイントとなった。すなわちフロイトは,無意識においては空想と現実の区別は不可能であることを知り,それ以後,抑圧された記憶の暴露による過去由来の事実を再構成するよりも,空想そのものの探求,そこにある心理的現実に関心を移していったのである。

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