改訂新版 世界大百科事典 「諏訪の本地」の意味・わかりやすい解説
諏訪の本地 (すわのほんじ)
物語。1巻または3巻。別名《諏訪縁起》《甲賀三郎》など。作者不詳。室町時代に成立。人間が苦難のすえに神となった由来を語る〈本地物〉の一つ。2系統の物語があり,主人公は甲賀三郎,名を諏方(よりかた)あるいは兼家とし,これをとって〈諏方系〉と〈兼家系〉と称する。諏方系は,魔王に奪われた愛妻春日姫を取り戻し,地底世界を遍歴したのち日本に帰った三郎が,春日姫や地底で契ったゆいまん姫とともに,それぞれ諏訪上宮,下宮,浅間の神となったと語る。兼家系は,三郎が魔王を滅ぼして三輪の姫宮を救出し,地底世界を遍歴したのち諏訪明神としてあらわれたと語る。この物語はもともと近江甲賀のあたりで発生し,兼家系は諏訪信仰と接触して甲賀の地に定着し,諏方系は甲賀から修験道の徒によって運ばれ,信州の諏訪信仰圏で広まったとみられる。なお,諏方系の物語は,はやく南北朝時代の《神道集》にも載る。
→甲賀三郎
執筆者:森 正人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報