論地(ろんち)ともいう。境界、所有権・用益権などをめぐる紛争の地をいう。江戸幕府(評定所(ひょうじょうしょ))では、田畑・山林においてこれらに関する訴訟が提起されると、訴訟方・相手方に対し係争地の絵図(立会絵図)の作成・提出を命じ、これと検地帳および当事者双方の主張をもとにして審理を進めた。論地が入り組んだ田畑の場合には、論所検地、論所地改(じあらため)といって双方の主張に基づいて実地検分が加えられた。また山野などで論所が国・郡境にかかわる場合は国絵図(くにえず)と立会絵図とが照合され、両図間に大差が認められないときには国絵図に従って裁許されたが、国絵図では処理しきれない場合には検使が係争者を従えて現地踏査を行い、その結果を参考に裁許が下された。
[飯岡正毅]
…以後,越前・尾張を境として東国は鎌倉の引付方,西国は六波羅探題の引付方,1293年(永仁1)の鎮西探題設置後は九州は探題が管掌し,いずれも終局判決を与えた。
[訴訟手続]
原告を訴人,被告を論人,訴象対象地を論所という。訴人は訴状を提出し,問注所の所務賦(しよむのくばり)という担当奉行が形式的な要件の欠陥を審査したうえで受理し,賦双紙(くばりそうし)という帳簿に登録し,訴状(申状ともいう)に銘を加え(折りたたんだ訴状の端の裏の部位に案件を示す見出しと年号月日の数字を書くこと),引付方に送付して,訴が裁判所に係属したことになる。…
…内済は裁判のどの段階においても行うことができ,審理の進行中も裁判役人はつねに内済の成立に努め,内済の可能性があるうちは何度も〈日延願(ひのべねがい)〉を許す。〈論所(ろんしよ)〉(地境論=境相論,水論など)や〈金公事(かねくじ)〉(借金銀など利息付,無担保の金銭債権に関する訴訟)ではとくに強く内済が勧められ,制度的にも,用水論などでは訴状に裏書(目安裏判(めやすうらはん),目安裏書)を与える前に現地での熟談内済を命じ(場所熟談物),金公事では目安裏書に内済勧奨文言を加え,あるいは原告だけの申立てによる内済(片済口(かたすみくち))を認めるなど,特別な手続が定められていた。刑事裁判手続(吟味筋(ぎんみすじ))においても場合によって内済が許される(吟味(願)下げ)。…
※「論所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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