検使(読み)ケンシ

デジタル大辞泉 「検使」の意味・読み・例文・類語

けん‐し【検使】

中世事実を見届けるために派遣される使者実検使
江戸時代殺傷変死現場に出向いて調べること。また、その役人

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精選版 日本国語大辞典 「検使」の意味・読み・例文・類語

けん‐し【検使・撿使】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 事実をあらため、見届けるために派遣される使者。室町時代以降に用いられた語で、鎌倉時代には、一般に実検使といった。
    1. [初出の実例]「追立の検使青侍季通、粟田口より次第に、路次にもちあふ物をうばひ取て、狼藉殊に甚し」(出典:平治物語(1220頃か)下)
  3. 殺傷、自殺、変死などの実情を調べ確認するために奉行所などから派遣される役人。また、その役人の取調べ。江戸時代には、領内騒擾、喧嘩乱闘、行き倒れ、変死など変事発生のときは、必ず確認を請わなければならなかった。
    1. [初出の実例]「一昨日松尾国祭也、於東寺西辺神幸時、駕輿丁神人等及喧嘩、数十人手負死人有之、〈略〉然間今日奉行飯尾肥前入道〈永祥〉、同加賀入道〈真妙〉、斎藤上野介〈凞基〉、等撿使参向、奉撿知之」(出典:康富記‐嘉吉三年(1443)四月一三日)
  4. けんちゅうし(検注使)
    1. [初出の実例]「横田庄撿使成舜勾当参申、昨日罷上云々、御米八十四石、名田十八町注進之、大略不作、珍事」(出典大乗院寺社雑事記‐文明四年(1472)一〇月四日)
  5. 地境論(土地境界争い)が起こったとき、実地に見分するため派遣される役人。また、その見分。地境論のある場合は、多く、双方が立ち会って作成した絵図の提出を求めるが、絵図だけで不明の場合に派遣された役人。
    1. [初出の実例]「一、町屋堺目相論之儀、其所之年寄共、出合見届、可相澄、其上不澄は、以撿使見届」(出典:吉川氏法度(1617)五七条)
  6. 切腹の場に立ち会い、それを見届けること。また、その役の人。江戸時代、大名などの切腹の場合は、多く、大目付あるいは目付が任命された。
    1. [初出の実例]「高松の城より降参して〈略〉雑兵をば助けらるべき由申すにより、船をつかはし検使をたて、名ある者共をば皆腹をきらせ」(出典:幸若・本能寺(室町末‐近世初))
  7. 江戸以外の犯罪地または代官陣屋などで死刑が執行されるとき、それに立ち会うため派遣される役人。また、その立会い。
    1. [初出の実例]「御仕置もの有之節心得之事〈略〉一 右首切検使に罷越候節は、道中いたし候はば其ままの装束也」(出典:地方落穂集(1763)一二)

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「検使」の解説

検使
けんし

中世では,事情の検分のため臨時に派遣される使者という意味で広範囲に使用され,鎌倉時代には実検使といい,室町時代以降「検使」の称が定着したという。江戸時代には犯罪の現場検証,刑罰執行の検分,土地境界争いの見分,災害の実況検分などを行う行為,およびそれを行う役人の呼称として用いられた。事件がおこると,現場の管理者や発見者から検使願がだされたうえで,検使が派遣された。検使を勤める役人は場所や事件の内容などによって異なり,江戸の武家地では目付もしくは徒(かち)目付・小人(こびと)目付,寺社地・寺社領では大検使または小検使,町方では町奉行所同心,在方では代官所の手付・手代が派遣された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「検使」の意味・わかりやすい解説

検使
けんし

事実を按検するために派遣する使者。殺傷,変死などを検視する役人で,鎌倉時代には実検使と呼ばれ,室町時代から検使と称した。江戸時代には検使の制度が整い,大名領内の騒擾,城の明渡し,また大名,旗本の切腹などには,格式に応じて検使が選定され,検屍の役を果した。

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