謝罪広告(読み)しゃざいこうこく

改訂新版 世界大百科事典 「謝罪広告」の意味・わかりやすい解説

謝罪広告 (しゃざいこうこく)

名誉毀損による損害賠償の方法の一つとして,加害者が被害者に対して広告という形で謝罪の意を表明するもの。たとえば,誤って虚偽の事実を報道して他人の名誉を毀損した週刊誌の記事につき,記事執筆者・雑誌社が新聞紙上に陳謝の意をあらわす広告を掲載する場合などがこれにあたる。名誉毀損を含む不法行為一般においては損害賠償は金銭の支払によって行われるのが原則であるが,名誉毀損においては単に賠償金を受領しただけでは被害者の名誉が回復されるとはかぎらない。そこで裁判所は,被害者の名誉回復のために相当であると判断したときには,賠償金の支払とあわせて謝罪広告の掲載を加害者に命じたり,あるいは賠償金の支払に代えてこれを命じることができる(民法723条)。賠償金の支払だけによっては被害者の損害を回復しえない種類の特別法上の不法行為,たとえば不正な方法によって他人の営業上の信用を害した場合(不正競争防止法1条の2),著作物に関する著作者人格権を侵害した場合(著作権法115条),特許権を侵害して特許権者の業務上の信用を侵害した場合(特許法106条)などにも,同様の謝罪広告が認められている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「謝罪広告」の意味・わかりやすい解説

謝罪広告
しゃざいこうこく

他人の名誉・信用を毀損(きそん)した者が、それを謝罪する旨の広告。通常は新聞紙上に掲載される。故意または過失によって人の名誉・信用を毀損すると、民法上不法行為を構成する(709条)。しかし、日本の民法上不法行為の損害賠償は金銭賠償を原則とする(722条・417条)ので、それだけでは毀損された名誉は回復されず、十分な救済とならない。そこで民法は、裁判所が被害者の請求により、損害賠償にかえ、または損害賠償とともに、名誉を回復するに適当な処分を命ずることができるものとした(723条)。その一つの方法が謝罪広告である。

淡路剛久

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語をあわせて調べる