足掻(読み)あがく

精選版 日本国語大辞典 「足掻」の意味・読み・例文・類語

あ‐が・く【足掻】

〘自カ五(四)〙
① 馬、牛などが地面を掻くように足を動かす。そのようにして歩き、走り、また、地を踏む。
万葉(8C後)七・一一四一「むこ川の水脈(みを)をはやみか赤駒の足何久(あガク)たぎちに濡れにけるかも」
平家(13C前)八「車をやれといふと心得て、五六町こそあがかせたれ」
手足をじたばたする。また、手足を動かしてもがく。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「思すやうに、平かにてと、手をあがきて祈り」
いたずらをしてあばれる。遊びまわる。また、騒ぎ立てる。主として子供のことにいう。
浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上「早くねせて、とく起し、昼あがかせたが万病円
④ 目的に向かってじたばたする。もがき苦しむ。気をもむ。
※玉塵抄(1563)一〇「財宝をほしがってあがけば、わざわい恥辱なことが来ぞ」
※浄瑠璃・道成寺現在蛇鱗(1742)二「人雇へば銭が出る、それ出すまいとあがいた代に」
⑤ まめに動いて一所懸命に励む。また、気をもんで働く。あくせくする。〔日葡辞書(1603‐04)〕
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「次第次第貯蓄(たくはへ)の手薄になる所から足掻(あが)き出したが」
⑥ 口をきく、隠語などを使うことをいう、人形浄瑠璃社会の隠語。
洒落本・浪花色八卦(1757)桔梗卦「古るけれど折にはせんぼうもあがき」

あ‐がき【足掻】

〘名〙 (動詞「あがく(足掻)」の連用形の名詞化)
① 馬、牛などが足で地面を蹴ること。転じて、馬の歩みの意に用いられることが多い。
※万葉(8C後)一一・二五一〇「赤駒が足我枳(アガキ)速けば雲居にも隠り行かむぞ袖枕(ま)吾妹(わぎも)
読本・椿説弓張月(1807‐11)前「馬の足掻(アガキ)をはやめてかへり給へば」
② 手足の動き。手足を屈伸させること。動作。
滑稽本・寒紅丑日待(1816‐26)めでたい事「むぐったところのあがきがいいのサ」
③ (子供などが)いたずらをしてあばれること。悪騒ぎ。
※浄瑠璃・栬狩剣本地(1714)三「昼の跑(アガキ)草臥(くたびれ)て、たはい性念(しゃうね)も長欠(あくび)
④ 生活上の苦しみなどで、もがくこと。
歌舞伎松梅鶯曾我(1822)五立「切りも叩かせ稼(かせ)がせたは、おれがあがきにやったのだ」

あし‐がき【足掻】

〘名〙
① 馬などが前脚で地面を蹴ること。あがき。
※大観本謡曲・知章(1427頃)「沖の方に向ひ高嘶(たかいなな)きし、足掻(アシガ)きしてぞ立ったりける」
片足で跳び歩く子供の遊び。けんけん。〔名語記(1275)〕

あし‐かき【足掻】

〘名〙 イネ科の多年草。本州中部以西の浅い水辺、海岸地の湿った所などに生える。茎の基部は水中を長くはい、上部は水上に出て高さ五〇~六〇センチメートルに達する。葉は細く、長さ約八~一五センチメートルで先がとがっている。夏から秋に、淡緑色の花穂が出る。
※俳諧・誹諧之連歌(飛梅千句)(1540)何毛第三「なたのしほやの尺八のあな あしかきにかかる瓜さねほの見えて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「足掻」の解説

足掻 (アシカキ)

学名:Leersia japonica
植物。イネ科の浮水性多年草

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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