障害者が生活する上で、障壁(バリアー)となるものを除去(フリー)すること。移動しやすいよう段差の解消など、住宅建築用語として使われはじめた。法律面では、建物を対象に守るべき基準を定めた「ハートビル法」と、駅など公共交通機関向けの「交通バリアフリー法」があったが、2006年、一体的に進めるため二つを統合したバリアフリー法が制定。20年の法改正で、障害者のサポートを学ぶ機会を増やすため市区町村の取り組みを支援するなど「心のバリアフリー」を推進し、ソフト面の対策を強化した。
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障害者や高齢者らが暮らしやすいように、あらゆる障壁(バリア)を取り除く(フリー)こと。または、取り除かれた状態をさすことば。障害者や高齢者だけでなく、子供、妊婦、乳幼児や子供を抱えた人、乳母車(うばぐるま)を押す人、要介護者、病人らすべての社会的弱者が安全で便利に移動・生活できる社会をハード・ソフト両面から整備することを意味する。ハード面では、車椅子(いす)利用者向けにスロープやエレベーターで段差を解消するほか、専用トイレ、専用駐車場、低床電車・ノンステップバスなどの導入や、視聴覚障害者向けには点字媒体、点字ブロック、音響式信号機、手話・文字放送などの整備が該当する。トイレなどでのベビーチェアや授乳室の整備、禁煙エリアの設定、盲導犬を連れていても利用できる飲食店の整備もバリアフリー化に該当する。ソフト面では、障害者用機器・器具の操作習熟、社会的弱者に対する差別の撤廃や偏見の根絶、バリアフリー教育・啓発活動などが該当する。このほか入試、雇用、資格試験などにおける男女間の格差是正、日本を訪れた外国人向けの各種掲示施設の多言語化なども広義のバリアフリーに含まれるとの考え方がある。なお類似概念に、ユニバーサル・デザインがあるが、バリアフリーが障壁を取り除く意味であるのに対し、ユニバーサル・デザインはすべての人が使いやすいようにあらかじめ設計(デザイン)する意味で使われる。
1974年、国連の障害者生活環境専門家会議が『バリアフリーデザイン』報告書をまとめたことで、バリアフリーという概念が世界的に知られるようになった。海外では、1960年代から、「建築障壁除去法」などを整備したアメリカがバリアフリー化で先行。日本では、1994年(平成6)に病院、百貨店などのバリアフリー化を推進する「ハートビル法」(平成6年法律第44号)、2000年(平成12)に公共交通機関を対象とした「交通バリアフリー法」(平成12年法律第68号)をそれぞれ制定し、2006年に両法を統合したバリアフリー法(正称「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」平成18年法律第91号)を施行してバリアフリー化に取り組んでいる。
[矢野 武 2021年9月17日]
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おもに障害分野で障壁がない状態を示す。国際的には1970年代に広まり,おもに物理的な障壁の除去を示す。日本では1990年代に定着し,政府を含め,広い意味で①物理的障壁,②制度的障壁,③文化・情報面での障壁,④意識上の障壁の除去について用いられる。大学に関しては,スロープや車いす用のトイレの設置などによる物理的な障壁の除去に加えて,点訳や手話通訳,ノートテイクなどの情報保障面の課題が大きい。国際的にはバリアフリーという言葉よりも,アクセシブルやアクセシビリティのほうが通用する。障害者権利条約では,アクセシビリティに関する独立した条文があり,建物や移動,情報通信の各分野について触れているほか,手話通訳者や朗読者も取り上げている。「合理的配慮」(「障害者」の項目参照)があくまで障害者一人一人に対応した変更や調整であるのに対して,バリアフリーやアクセシビリティは社会制度としての整備である。
著者: 長瀬修
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(中谷茂一 聖学院大学助教授 / 2007年)
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