バリアフリー(読み)ばりあふりー(英語表記)barrier free

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バリアフリー」の意味・わかりやすい解説

バリアフリー
ばりあふりー
barrier free

障害者や高齢者らが暮らしやすいように、あらゆる障壁バリア)を取り除く(フリー)こと。または、取り除かれた状態をさすことば。障害者や高齢者だけでなく、子供、妊婦乳幼児や子供を抱えた人、乳母車(うばぐるま)を押す人、要介護者、病人らすべての社会的弱者が安全で便利に移動・生活できる社会をハード・ソフト両面から整備することを意味する。ハード面では、車椅子(いす)利用者向けにスロープエレベーター段差を解消するほか、専用トイレ、専用駐車場、低床電車・ノンステップバスなどの導入や、視聴覚障害者向けには点字媒体、点字ブロック、音響式信号機、手話・文字放送などの整備が該当する。トイレなどでのベビーチェアや授乳室の整備、禁煙エリアの設定、盲導犬を連れていても利用できる飲食店の整備もバリアフリー化に該当する。ソフト面では、障害者用機器・器具の操作習熟、社会的弱者に対する差別の撤廃偏見根絶、バリアフリー教育・啓発活動などが該当する。このほか入試、雇用、資格試験などにおける男女間の格差是正、日本を訪れた外国人向けの各種掲示施設の多言語化なども広義のバリアフリーに含まれるとの考え方がある。なお類似概念に、ユニバーサル・デザインがあるが、バリアフリーが障壁を取り除く意味であるのに対し、ユニバーサル・デザインはすべての人が使いやすいようにあらかじめ設計(デザイン)する意味で使われる。

 1974年、国連の障害者生活環境専門家会議が『バリアフリーデザイン』報告書をまとめたことで、バリアフリーという概念が世界的に知られるようになった。海外では、1960年代から、「建築障壁除去法」などを整備したアメリカがバリアフリー化で先行。日本では、1994年(平成6)に病院、百貨店などのバリアフリー化を推進する「ハートビル法」(平成6年法律第44号)、2000年(平成12)に公共交通機関を対象とした「交通バリアフリー法」(平成12年法律第68号)をそれぞれ制定し、2006年に両法を統合したバリアフリー法(正称「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」平成18年法律第91号)を施行してバリアフリー化に取り組んでいる。

[矢野 武 2021年9月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バリアフリー」の意味・わかりやすい解説

バリアフリー
barrier free

高齢者や障害者が支障なく自立した日常生活・社会生活を送れるように,物理的・心理的・社会制度・情報の障壁(バリア)をすべて除去する(フリー) こと,あるいはそれらが実現した生活環境。1974年,国連障害者生活環境専門会議の報告書『バリアフリーデザイン』Barrier Free Designで建築用語として用いられて以来,広く使われるようになった。日本では 1970年代半ばから福祉的な取り組みとして進められ,段差をなくした道路やエレベータつきの駅ホーム,車椅子でも使いやすい公共施設や乗り物,風呂や廊下に手すりをつけたり戸口を広くするなどの工夫をした住宅などが普及するようになった。また 1993年策定の「障害者対策に関する新長期計画」にはバリアフリー社会の構築を目指すことが明記され,2000年,バリアフリーに関する関係閣僚会議が設置された。2006年,交通バリアフリー法ハートビル法を統合・拡充した「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」が施行。近年では,障害者政策にとどまらず,すべての国民が安全・快適に過ごせる社会構築のための基本的な理念となっている。(→ノーマライゼーションユニバーサルデザイン

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