軋る(読み)キシル

デジタル大辞泉 「軋る」の意味・読み・例文・類語

きし・る【×軋る/×轢る/×輾る】

[動ラ五(四)]
堅い物が強くすれ合って音を立てる。きしむ。「雨戸の―・る音」
すれ合わんばかりに近づける。
ふなばたを―・り艫舳ともへならべたれば」〈太平記一六
かじる。かむ。
「夜ごとに鼠が―・りけるが」〈咄・きのふはけふ・上〉
[類語]軋む軋めく

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精選版 日本国語大辞典 「軋る」の意味・読み・例文・類語

きし・る【軋・輾】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 堅いもの同士が強く触れ合って音が出る。摩擦し合って音が出る。きしむ。〔十巻本和名抄(934頃)〕
    1. [初出の実例]「裏の井戸で釣瓶を軋らせる響」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙
    1. 堅いものが強く触れ合って音を出す。摩擦して音を出す。また特に、車輪が摩擦で音をたてるほど車を疾走させる。きしませる。
      1. [初出の実例]「暁氷をきしる車のあと」(出典:平家物語(13C前)三)
      2. 「砂利(ざり)を輾(キシ)る音が遠く横町を離れた頃」(出典:薄衣(1899)〈永井荷風〉六)
    2. 物と物とを、すれ合うようにする。音をたててすり合わせる。
      1. [初出の実例]「やまうちのみそきはにうゑし桜花かきをきしりて咲にける哉〈藤原親隆〉」(出典:木工権頭為忠百首(1136頃)桜)
      2. 「舷を輾(キシ)り、艫舳を双(なら)べたれば」(出典:太平記(14C後)一六)
    3. 勢いや数を争うように、触れ合わせる。また、接触して、競い合わせる。
      1. [初出の実例]「社はいらかをならべ、廻廊軒をきしれり」(出典:撰集抄(1250頃)七)
    4. ねずみなどが、きしるような音をたてて物をかじる。歯でかじる。
      1. [初出の実例]「又鼠といふ物は、大事の物の本をもきしり破(やぶり)」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品四七)

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